2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25580160
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
藤田 高夫 関西大学, 文学部, 教授 (90298836)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 軍事費 / 部隊編制 / 軍糧 / 馬匹価格 / 中国古代 |
Research Abstract |
研究初年度にあたる平成25年度では、(A)部隊編制面でのデータ収集の一環として、上孫家寨漢墓出土簡を用いて、部隊編制に関わる基本的情報を抽出し、「理念」的な部隊編制の復原を試みるための作業を行った。あわせて(B)消費物資面のデータ収集として、『漢書』趙充国伝を詳細に検討し、軍量・馬匹から必要物資を算出する基本的方法を確立した。また前漢時代の馬匹価格について、文献史料および出土文字史料から事例を検出し、検討を開始した。あわせて、軍事費に関わるいくつかの先行研究を取り上げ、その数値データ処理を吟味して、参照すべきデータを確定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は基本的データ収集に集中する計画であり、その作業は予定どおり進行した。軍隊規模については、先行研究のうちで軍費支出を扱ったものを集中的に検討した結果、従来の軍費算出においては欠落した数字、とりわけ常備軍的軍隊にかかわる数字を補うために、当時の総人口から軍役義務を負う人数を概算して常備軍規模を推定する手法が共通して取られていることが判明した。同時に、同じ手法を用いながら論者によって推定される軍隊規模に大きな差があることも明らかとなった。かかる結果となるのは、不明な部分の多い漢代の徴兵制度をそのまま数値算出に適用したためであると判断された。本研究では、漢帝国全体の徴兵数を義務兵役人数から算出するのではなく、具体的な数字が把握できる地域に限定してその規模を確定し、それを帝国全体に拡大するという手法をとることで、制度史的アプローチでは幅のある軍隊規模推定に一定の枠をはめることができた。 ただし、秦漢時代では常備軍的軍隊の設置に地域差が想定されるため、その地域差を把握する手法として、地域による都尉府設置の濃密を測定するという作業が新たに必要となり、この部分は若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては、(A)部隊編制に関しては、「遠征軍」の編成について一定の結論を得る。あわせて中央・地方の常備的軍隊の編成を考えるためのデータを収集する。また(B)消費物資面では、前年度までのデータに加え、兵卒の装備に関わる数値データを収集し、恒常的コストの算出作業を進める。 平成27年度においては、前漢時代のいくつかの大規模な対外遠征に関して、それぞれのコスト算定を試みる。これに常備軍の維持に必要なコストを合わせ考え、中国古代の軍事費に関する一定の所見を得る。
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