2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25580160
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
藤田 高夫 関西大学, 文学部, 教授 (90298836)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 軍事費 / 軍法 / 軍事編成 / 都尉府 / 国家予算 / 辺境防衛 / 対外遠征 / 軍功 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来漠然と語られてきた古代国家における軍事の占める位置を、人的・財政的負担の面から定量的に把握するために、基礎的数値を析出することを目的としている。そのためには、軍隊の規模、その維持に必要な経費、臨時的遠征に必要な兵員と費用などについて、基礎的データを文献史料・出土史料などを駆使して確定するという手法をとった。 最終年度では、過去2年間で集積した個別のデータを踏まえて本研究の総括として3つの側面から、中国古代国家における軍事費の全体像の把握を試みた。具体的には、1)対外遠征の事例として前漢期の対羌族遠征の費用概算、2)費目別分類に基づく年間の経常的軍事費の概算、3)常備軍的性格を持つ兵力数の概算、の3方面から軍隊規模・軍事費の概算値を推計することができた。 1)に関しては、数多い対外遠征において、例外的に詳細な数値が確認できる趙充国の対羌族遠征を分析し、遠征期間・動員数を部隊ごとに析出し、それに必要な経費を積算して約10億銭という遠征費を得た。一方で、この遠征に要した費用が総額では40億銭を超えたとする史料も存在することから、対外遠征には通常の「軍事力維持」に必要な経費以外の支出が多額に上ることが導かれた。2)については、経常的軍事費すなわち軍官俸給・糧食・武器装備などはある程度の積算が可能であり、総計として約10億~20億銭が概算値として得られた。しかし臨時的な支出である軍功賞賜や帰順者への報償などは、軍事行動の規模や成果によって大きな幅があり、定量化は困難であることが確認された。3)については、中央軍・地方軍・辺境軍などの各部隊を総計して、前漢では約70万~100万、後漢では約30万が常備兵数であったことを推算した。これらを総合して、国家財政への影響面では、経常的軍事費よりも臨時的遠征の有無が決定的な要因であることを導いた。
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Research Products
(5 results)