2014 Fiscal Year Research-status Report
前方後円墳の類型化と地域性に関する歴史GISの応用的研究
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25580174
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
出田 和久 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (40128335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石崎 研二 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (10281239)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 前方後円墳 / GISデータベース / 地域性 / 立地 / 考古地理学 / 古墳時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は東北・関東・東海(愛知・静岡)・甲信(長野・山梨)及び中国(広島・岡山)の各地方を調査対象として、主要な前方後円墳の立地や現況等の現地調査を行なった。また、基本資料である『前方後円墳集成』の「地域の概要」に築造時期についての記載がある古墳についてはデータに追加した。さらに前方後円墳の位置データの入力・修正を行なった。このほか、『集成』刊行以後の新発見分を含め収集資料により順次データの追加・更新を進めた。 作成したデータベースにより時期別の立地傾向や地域差に関して、以下のように若干の検討を行なった。平野・平地、自然堤防等の低地に立地する前方後円墳は全体の8.9%であるが、相対的に比高が高い山麓・丘陵に立地するものは48.5%を占める。これを時期別にみると中期に前方後円墳の立地が多様化することが明らかとなった。低地に立地するものは、1期では21基のうち墳長50mを超えるのは4基に過ぎず、しかも奈良・兵庫両県にのみであるのに対して、10期の古墳では34基のうち約72%の23基が墳長50mを超え、しかも19基は栃木・群馬・埼玉・千葉の各県に集中しており、地域的な様相が大きく異なっている事実が指摘できた。そこで、日本列島での東西差についてみると、前方後円墳の分布は西が2970基、東が2363基で、時期が推定された内の各時期の東の割合は1期では16.1%であったが、2期になると27.9%と急増し、3期は26.2%、4期は26.2%、5期は16.4%、6期は14.6%、7期は33.0%、8期は20.6%、9期は33.5%、と推移し、10期には65%を占め、234基に達する。また、10期については79%が台地・段丘上に位置するという立地上の特色がみられた。 以上のように時期と地域を中心に若干の分析を試み、WebGISデータベースに収載する属性データの検討素材を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
『前方後円墳集成』の「地域の概要」の部分の記述をもとに前方後円墳の築造時期に関するデータの入力がほぼ終わり、上記のように時期別に立地の動向や地域的な差異等について検討することが可能となった。 そのため、さらには前倒しでwebGISデータベースの基本仕様をほぼ固めることができ、全国版前方後円墳データベースに実装する機能について検討し、基本設計・プログラミング(WEB地図上での全国前方後円墳の基本表示・検索機能の設計・実装の一部試作)まで進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ArcGISを使用して作成したGISデータベースを活用し、前方後円墳の全国的スケールでの立地等の類型化をはじめ築造時期・規模・副葬品等に関する検討を進めて地域的特色の解明を図り、古代国家成立前夜の日本列島の前方後円墳からみた地域相を把握するよう努める。 さらに、WebGISデータベース構築に向けて基本部分を前倒しで作成したので、今後は一般的なパーソナルコンピュータやweb環境で5,300基を超える前方後円墳のデータをスムーズに検索・表示できるように改良を進める。 そのために上で挙げたような分析・検討をさらに深め、その結果を踏まえて、WebGISデータベースで有効な結果が得られるように搭載する属性項目について検討を進める。web上で利用者が主題図を作成できる機能の実装については十分な試行時間を確保して、完成度の高いものとするよう努める。また、並行して、調査未了地域の調査と補充調査により現況写真やデータの補充を進める。 以上により、今年度中のWebGISデータベース完成をめざす。
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Causes of Carryover |
年度末の使用により、残高端数の把握が不十分で20円の誤差が生じたためと思われる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額が僅か20円であるので、特に使用計画の変更は必要ないものと思われる。
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