2015 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における工業労働者への食料供給と植民地経営をめぐる地理学的研究
Project/Area Number |
25580176
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
荒木 一視 山口大学, 教育学部, 教授 (80254663)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 食料供給 / 近代 / 植民地 / フードレジーム論 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い,前年度までの台湾や朝鮮半島につづき,中国大陸に重点をおいた地域別分析に取り組んだ。また,最終年度として研究の取りまとめを行った。具体的には大きく以下の3点にわけられる。第1は中国大陸の研究で,「満州国」との粟貿易に注目した分析を行い2015年秋の日本地理学会で報告するとともに,2016年5月刊行予定の「人文地理」誌に論文として掲載される。第2は上記台湾,朝鮮半島,中国大陸以外の地域の分析についても予定通り実施し,フィリピンに関する成果を得た(「エリア山口」に論文として掲載済)。第3は研究の取りまとめであり,2015年10月に上海で開催された国際会議(10th China-Japan-Korea Joint Conference on Geography)において報告するとともに,「地理科学」誌に展望論文として掲載された。また,近く日本経済評論社から発行予定の書籍で担当する章においても「日本の食糧政策と経済地理学」と題した論考を寄稿している。 以上を通じて,近代日本の工業化を支えた労働者への食料供給を東アジアを中心とした農産物・食料貿易との関わりから描き出した。それは同時に戦前の日本の植民地政策とも密接に関わっている。これらの理解のためには,日本が明治中期以降一貫して米をはじめとする穀物供給の少なからぬ部分を海外に依存せざるをえなかったという認識を持つことが必要で,その上で,当時の文脈の中でいかにして安定した食料供給体制を構築するのかという取り組みが展開されたかを論じなければならない。本研究では,少なからぬ問題を抱えつつも,当時の日本が自国の食料供給に対して明確な問題意識を持って様々の取り組みを展開していたことが明らかになった。それは当時以上に食料を海外に依存する今日の日本の食料供給を論じる際にも有効な観点を提供する。
|