2014 Fiscal Year Research-status Report
ラオス焼畑山村における半世紀間の土地利用変化に関する研究
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25580178
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
中辻 享 甲南大学, 文学部, 准教授 (60431649)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / ラオス / 空中写真 / コロナ衛星画像 / 焼畑 / 土地利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は地理資料と現地調査により、ラオス人民民主共和国(以下、ラオスと略称)の山地部における70年間の土地利用の変化とその要因を明らかにすることである。地理資料としては、平成26年度までに、対象地域であるルアンパバーン県シェンヌン郡のカン川周辺の空中写真やコロナ衛星画像をラオスやアメリカの公的機関で収集した。これにより、1944年を起点として、50年代から90年代までの画像をそれぞれ得ることができた。 26年度にはまず、GISソフトであるTNTmipsを用い、これらの画像のオルソ補正(空中写真の歪みを除去し、地形図と同様の正射投影の状態とすること)を行なった。その後、各年代の画像を見比べ、どのような土地利用変化が見られるのかを検討した。 2月には主に3つの行政村で現地調査を行った。まず、この70年間における各村領域内における集落の動態を調査した。各村とも、かつては現在の集落とは別の位置に集落が形成されていたことがあり、村人もそのことはよく記憶していた。あわせて、得られた画像の撮影年における各村領域内の人口(世帯数)を把握した。また、各村の森林の変遷について、住民への聞き取りから明らかにしようとした。さらに、過去の画像に写る植生を分類するために、当年の焼畑、草地、ブッシュ、長期休閑林などの植生が空中写真や衛星画像にどのように映るかを明らかにすることは必要である。そのため、アメリカのDigitalGlobe社に、商業用高分解能衛星であるWorld View-3を用いての対象地域の撮影を依頼した(撮影は3月14日)。現地では多数の場所で植生調査を行い、各植生が衛星画像にどのように写るかを検討した。 東南アジア山村における土地利用の変化をこれだけ長期間かつ、多くの時点の地理資料から捉えた研究は少ない。まだ、分析途中であるが、本研究からはいくつかの興味深い発見が生まれつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のオルソ補正の作業に予想以上の時間がかかってしまったためである。私にとってオルソ補正は初めて行う作業であり、TNTmipsも初めて使用するソフトであった。さらに、対象地域は100平方キロと広く、空中写真の場合、各年代で5枚から6枚の補正が必要であった。オルソ補正の作業だけで4ヶ月もの時間がかかった。 すでに、補助事業期間延長を申請し、承認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度にはまず、8月までに対象地域のオルソ補正画像を用い、各年代の土地利用図を作成したい。それにより、焼畑、短期休閑林(草地)、休閑林、巨木林などが対象地域でどのように変遷してきたかを具体的に明らかにする。 既往研究のレビューも不十分なので、それも実施したい。空中写真やコロナ衛星画像を用いて、過去の土地利用の変化を明らかにした研究にはどんな研究があり、どんなことを明らかにしているかということを知るためである。また、こうした地理資料を用いることでどんなことがどこまで可能で、どこに限界があるのかを知るためでもある。 9月には再びラオスに渡航し、対象地域での現地調査を行う(2週間程度)。2月の調査の補足であり、集落動態、人口動態、森林の変化について主に住民への聞き取りから詳細に把握したい。この現地調査を実りあるものとするためにも、8月までに画像を用いた土地利用分析を入念に行っておく必要がある。帰国後すぐに調査データの整理を行う。 現地調査を行うためにはカウンターパートであるラオス国立大学社会科学部での研究員としての受入継続の承認が必要である。これについては、すでに申請書をカウンターパートに送付しており、承認を待っているところである。 10月以降は研究の総括を行い、画像の分析データと現地での聞き取りデータをつき合わせ、最終的な結論を導き出す。それを11月の人文地理学会において発表する予定である。11月以降は論文にまとめ、最終的には英語論文を作成し、海外の学術雑誌に投稿したい。
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Causes of Carryover |
空中写真や衛星画像のオルソ補正の作業に時間がかかり、現地調査を行うために必要な経費を十分に使用しなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地調査で使用するノートパソコン・タブレット型端末・GPSの購入費用、現地調査を行うためのカウンターパート(ラオス国立大学)への研究者としての登録料、ラオス国立地図局に保管されている大量の空中写真をスキャンするためのスキャナーの費用とそれをラオスまで輸送するための費用、現地調査のための出張費、2015年の対象地域の土地利用を把握するための高分解能衛星画像の購入費用として使用する。
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