2015 Fiscal Year Annual Research Report
花祭の発展的継承と地域文化の多様性保全に向けた社会シナリオの創出
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25580180
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐々木 重洋 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (00293275)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 花祭 / 社会シナリオ研究 / 地域振興 / 中山間地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度はまず、奥三河の東栄町と豊根村を中心に花祭の継承状況と、それらに対する行政とNPOの支援に関する資料の収集・整理をおこなうとともに、前年度までに得られた知見を総括しつつ、花祭保存会関係者、行政関係者とともに、花祭の継承を起点としつつ、相互信頼と連帯に支えられた地域社会の再構築と、地域活性化を両立させ得る社会シナリオの考究に取り組んだ。とくに、これまでに蓄積されてきた花祭の記録資料と学術研究の成果を、継承支援と地域活性化にどのように活かし得るかという点を中心に議論を重ねるとともに、別財源(文化庁事業補助金)を用いてこの課題について討議する一般公開ワークショップ(2016年1月16日~18日、於東栄町花祭会館)を開催し、花祭保存会員、地域住民、行政担当者らと意見交換をおこなうとともに、質問票を用いた調査をあわせて実施し、この課題に関するそれぞれの立場からの意見と希望に関する資料を収集・整理した。 また、伝統文化の継承強化と地域振興を両立させる方途のひとつとして、森林資源の適切な管理と、地域の特産品、とくに同地域が中山間地域であることから木材資源と農産物の積極的な活用による雇用の促進や創出と、花祭の継承をどのように関連づけることができるか、学・官・民による検討をおこなった。その結果、いくつかの見通しが得られた一方、文化を扱う部署と経済・企画を扱う部署が乖離していること、そもそも自治体側にそうしたシナリオを実行に移すだけのマンパワーが深刻な度合いで不足していること、も再確認された。 なお、年度の後半には、これまでに得られた知見をふまえ、花祭の事例をもとに、動画記録資料の作成と保管、一般公開が伝統文化の継承に果し得る役割について論じた論考が『DVDブック 甦る民俗映像-渋沢敬三と宮本繋太郎が撮った一九三〇年代の日本・アジア』(岩波書店、2016年3月)において公表された。
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