2013 Fiscal Year Research-status Report
財の多様化と物権法の再構築――「財の法」の構築を目指して
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25590019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉田 克己 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (20013021)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 財の法 / 財の多様化 / 帰属関係 / 所有権 / 身体 / 利益 / 環境利益 / 集合的利益 |
Research Abstract |
最初の年度であり、資料収集と端緒的理論活動に重点を置きつつ、一定の論点については、報告、論文等の成果公表も行った。 ①総論的検討では、2014年度私法学会シンポジウム「財の多様化と民法学」の準備研究会が開始され、その中で総論報告「財の多様化と民法学」の準備を進めた。日本における財の多様化の現実のあり方の鳥瞰的検討と総論的理論的検討がそこでの課題である。現在、吉田克己=片山直也編『財の多様化と民法学』の公刊準備が進んでおり、そこに鳥瞰的検討を寄稿する予定である。また、学会報告原稿はNBL誌に公表する予定であり、現在、この2本の論文を執筆中である。 ②各論的検討では、身体論に関して、法社会学会ミニシンポ「身体・所有・自由」において「法は身体をどのように捉えるべきか」と題する総論的報告を行い、これを論文にまとめた(要約版「法は身体をどのように捉えるべきか」法社会学80号、詳細版「身体の法的地位(1)(2完)」民商法雑誌149巻1号~2号掲載予定)。また、この過程で、このテーマに関して実務家との交流も行った(小島妙子)。また、集合利益論についても、前年度に行った公開カンファレンス(神戸大学)を論文化する作業を行い、これを公表した(「保護法益としての利益と民法学--個別的利益・集合的利益・公共的利益」民商法雑誌148巻6号)。それ以外のテーマとしては、とりわけフランスの財の法に関する基礎文献の収集と検討を行った。 ③フランスに赴いて、関係研究者との意見交換、議論を行った。具体的には、ムスタファ・メキ(パリ第13大学)、ティリィ・ルヴェ(パリ第1大学)、フロランス・ベリィヴィエ(パリ第10大学)ほか6名の研究者である。とりわけ帰属関係論(フランスのゼナティ理論の検討)と身体論に関して大きな理論的収穫があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
総論的課題については、私法学会報告準備を中心に、着実に課題の検討に取り組むことができた。理論的には、財においても人格的価値の問題が重要になってきており、これが現代の財の法を考えるための1つの重要な視角になるとの認識を得たことが重要であった。各論的課題については、身体論と集合的利益論について論文の形で成果をまとめることができた。また、負財に関する検討もかなり進展することができた。フランスとの理論交流も順調である。このようにして、全体として研究課題はおおむね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究遂行上の問題点は特になく、研究計画変更の必要性はないものと考えている。次年度は、3年計画の2年目に当たる。総論的課題については、私法学会報告のための2本の論文執筆を完成させて報告に臨む。これによって、現代における財の多様化の鳥瞰的考察を行うとともに、財の多様化に対応する民法学の課題に関する理論的考察を行う予定である。各論的考察については、負財論および物のパブリシティに関する検討に重点を置くつもりである。フランスとの理論交流に関しては、エクス・マルセイユ大学マチルド・ブトネ教授との間で、環境利益や予防原則に関する共同研究を実施する計画が進行しつつあり、これに重点を置く。また、パリ第13大学ムスタファ・メキ教授との間で、不動産公証制度の共同研究を実施する計画があり、これにも取り組む。
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Research Products
(8 results)