2014 Fiscal Year Research-status Report
リスクを回避する権利―リスク社会における新しい人権の構築
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25590024
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
西村 淑子 群馬大学, 社会情報学部, 教授 (80323327)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原発事故 / 低線量被ばく / 放射能汚染 / 避難者 / リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、①福島原発事故による避難者及び汚染地域の住民について、どのような利益が損なわれているのか、その実態を明らかにすること、②低線量被ばくの健康リスクを回避することを「権利」として構成することにある。 今年度は、上記目的を達成するために、以下の調査研究を行った。 (1)平成25年度に群馬県の住民を対象として行ったアンケート調査「放射能汚染に関する意識・行動調査」の結果を分析した。また、群馬県内の住民を対象として、甲状腺検査等の健康調査の希望の有無、甲状腺検査の実施状況等について、聞き取り調査を行った。現在、福島県外の住民については、県による健康調査が実施された例はないが、専門家の協力の下で市町村又はNPO等による検査が実施されており、その結果が蓄積されてきていることから、福島県外の健康調査の実施状況や調査結果について情報収集を行った。 (2)避難者の状況について、北関東地域に居住する避難者を対象として実施された聞き取り調査の結果を分析し、被災者支援に係る法政策の課題を検討した。 (3)避難者を原告とする東京電力及び国に対する損害賠償請求について、情報収集と分析を行った。自主避難者を含む原告らが避難したことの合理性と慰謝料請求の法的根拠について考察を行った。裁判において、原告らが侵害された権利は、平穏生活権、人格権、内心の静穏な感情を害されない利益等であると主張されている。本研究で構築しようとしている「低線量被ばくの健康リスクを回避する権利」と裁判上主張されている上記の権利利益との関係や相違点について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)避難者及び汚染地域の住民を対象としたアンケート調査及び聞き取り調査の結果を分析し、福島県外における子どもを対象とした甲状腺検査の実施の必要性を明らかにするなど原発事故子ども被災者支援法の運用上の課題を明らかにした。 (2)自主避難者を含む原告らによる東電及び国を被告とした損害賠償請求訴訟について情報取集と分析を行い、「低線量被ばくの健康リスクを回避する権利」に関連する先行研究を調査した。 以上の理由から、おおむね平成26年度の研究実施計画の通り実施されているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)原発事故の被災者支援に係る法政策の課題を明らかにする。 (2)低線量被ばくの健康リスクを回避することを「権利」として構成する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、420,946円である。上記金額が生じた主な理由は、以下の通りである。 (1)平成26年度に購入を予定していた図書を、テーマを一部共通とする別の科研費「原発震災後の人間の安全保障の再検討」(研究代表者:重田康博)で購入することができた。 (2)平成26年8月に予定していた調査(出張)を、大学の業務の都合により、平成27年8月に変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に以下の項目について使用する計画である。 (1)図書等文献の購入、(2)ノートパソコンの購入、(3)旅費(調査、研究会等への出席)
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