2016 Fiscal Year Annual Research Report
The right to avoid risk by radiation exposure
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25590024
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
西村 淑子 群馬大学, 社会情報学部, 教授 (80323327)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 福島原発事故 / 原子力損害賠償 / 国家賠償 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第1に福島原発事故による避難者及び汚染地域の住民について、どのような利益が損なわれているか、その実態を明らかにすること、第2に低線量被ばくの健康リスクを回避する又は軽減することを「権利」として構成することにある。汚染地域住民の利益侵害の実態については、群馬県の住民2000人(主に小さな子どもの保護者)を対象とするアンケート調査を実施し、明らかにすることを試みた。アンケート調査の結果とこれに対する考察は、平成25年度群馬大学地域貢献事業「放射能汚染に関する意識・行動調査報告書」として公表した。低線量被ばくの健康リスクを回避する又は軽減する「権利」については、政府による避難指示対象区域外からの避難者(いわゆる自主避難者)の避難の合理性を検証することとした。福島第一原発事故損害賠償請求事件の前橋地方裁判所平成29年3月17日判決は、原告が請求の根拠とする平穏生活権について「原子力発電に関わる放射性物質によって汚染されていない環境において生活し、放射線被ばくへの恐怖不安にさらされない利益」を内包するとした。また「国等による避難指示の基準となる年間20mSvを下回る低線量被ばくによる健康被害を懸念することが科学的に不適切であるということはできない」などとして、自主避難者に一定程度の慰謝料を認容したものであり、示唆に富むものであった。今後出される本件控訴審判決や他の地裁判決等を引き続き検討し、「権利」の構成につなげていく。
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