2016 Fiscal Year Annual Research Report
Rising Nationalism in China and its impact on the Chinese foreign policy
Project/Area Number |
25590033
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
唐 亮 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (10257743)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナショナリズム / 愛国主義教育 / 対外開放路線 / 社会の多様性 / 大衆ナショナリズム / 外交の主導権 / 社会秩序 |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究では、中国のナショナリズムを官民一体のものと捉えて、その高揚が愛国主義教育、歴史教育の結果とされている。本研究は官製ナショナリズムのほか、多様な大衆ナショナリズムの発展と中国外交への影響を次のように明らかにした。第一に、中国政府はナショナリズムに関し両面性をもつ。愛国主義は一党支配を正当化しようとする内向きな傾向が強い。他方、近代化の推進は諸外国の協調外交、特に欧米各国との安定した外交関係を必要とするために、対外開放政策は方向性としてリベラルなナショナリズムに近いものである。両者のバランスは状況によって変化する。政治権力は安定する時に対外開放の傾向、逆の場合には内向きの傾向が強まってくる。第二に、経済成長、教育の発展、対外交流、情報化は進む中で、より多くの人々は国際的な感覚を持つようになった。リベラルなナショナリズムは国際ルールの順守や対外協調を強調し、その主な担い手は中産階級、特にリベラルな知識人である。彼らは対外開放路線を積極的に支持するが、民主化、民主化の要求で政府と対立している。第三に、弱者層と左派知識人は貧富格差などの国内問題や西側による中国批判に強い不満を持っているが、ナショナリズムはそうした不満のはけ口となる。偏狭なナショナリズムは自国へのアイデンティティやプライドを強調し、一党支配体制を支持するほか、反日デモや過激な排外的活動で中心的な役割を果たした。第四に、中国政府にとって、新左派は体制の支持基盤であるが、偏狭なナショナリズムの高揚、特にデモなどでの破壊的な活動は、社会の混乱や法的秩序の破壊をもたらし、対外摩擦を拡大させるリスクが大きい。近年、中国政府はメディア規制や過激的な発動への法的処罰を強化した結果、大規模なデモは抑えられるようになり、偏狭なナショナリズムは情緒的な対外批判の言論や外国製品の不買運動といった形式へと変化した。
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