2014 Fiscal Year Research-status Report
ベイズ理論を用いたMS-AIDSモデルの推定法・モデル選択法の提案とその応用
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25590051
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金澤 雄一郎 筑波大学, システム情報系, 教授 (50233854)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Bayesian estimation / Markov-switching / almost ideal demand / multi-move sampler / Hamilton filter / Bayes factor / Bayesian Informaction / generalized BIC |
Outline of Annual Research Achievements |
ブランド等によって差別化された財市場における合併の競争制限効果をみるためには、市場支配力が生じるか否かをみることが重要である。市場支配力とは企業が競争市場における価格水準以上に、すなわち限界費用以上に価格を上昇させることができる能力であると考えることができ、プライス・コスト・マージンが市場支配力を表す主な指標となる。企業のプライス・コスト・マージンは、一般にそれぞれ企業のマーケットシェアをその企業の需要の価格弾力性で割った値、および企業の需要の価格弾力性の逆数に等しいことが知られている。この弾力性を推定するために必要となる需要関数の推定モデルとして現在最も受け入れられているモデルが、Deaton and Muellbauer (1980) のAIDSモデルであろう。 1998 年1 月~2006 年12 月の108 か月にわたる日本の食肉市場(牛・豚・鳥・魚肉)を対象にAllais and Nichele の提案する最尤法を用いてMS-AIDS モデルを推定し、レジーム2 に属する確率を計算したところ、日本で最初にBSE が報告された2001 年の9 月を境にレジーム2 にシフトが起こったという単純な計算結果になった。しかしながら代表者が提案するベイズ推定手法によると、日本において最初のBSE が報告された2001 年の9 月を境に一時的にレジーム2 にシフトが起こるものの、ニュースが陳腐化するにつれレジーム1 に揺り戻しが起こり、2003 年12 月にアメリカで最初のBSE が報告されて、再度レジーム2へのシフトが始まり、2005 年6 月にアメリカで第二のBSE が報告されるころにはすでにこのシフトが完成された姿が浮かび上がる。すなわちAllais and Nichele によって提案された方法よりはるかにニュアンスに富んだレジームスイッチングの姿が浮かび上がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非線形のMarkov-switching AIDS modelにおけるモデル選択基準の確立の第一歩として Variable Selection in a Bayesian Linear Regression Model via Generalized Bayesian Information Criterion を筑波大学社会工学域 Discussion Paper Series No.1316に、Are manufacturers' efforts to improve their brands' reputation really rewarded? The case of Japanese yogurt marketを筑波大学社会工学域 Discussion Paper Series No.1322に発表した。また Estimating the Markov-switching almost ideal demand systems: a Bayesian approach を2013年のImpact Factorが0.628である Empirical Economics の Volume 47, Issue 4, pp 1193-1220, December 2014に出版した。この論文はDOI 10.1007/s00181-013-0777-3, Print ISSN 0377-7332, Online ISSN 1435-8921である。
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Strategy for Future Research Activity |
ベイズ理論に基づくモデル選択規準として最も理論的に優れていると考えられているSpiegelhalter, et al. (2002) らの提唱した DICのアイディアは複雑な階層ベイズモデルでパラメータの数を頻度理論のように明示できない場合に、ディビアンスの事後平均と事後分布の平均値におけるディビアンスの差を effective number of parameters (pD) と定義し、これをもってベイズ的なモデルの複雑さを測る基準としたことにある。ディビアンスは標本数が多い場合には漸近的に優れた性質をもつことが知られている。 MS-AIDSモデルの推定にあたって利用したのは1998年1月から2006年12月まで108か月であり、パラメータ数に比してデータ数が非常に限られている。このため漸近理論に根拠をおく DIC を適用する際、有限の標本数の場合に対するバイアスコレクションを行う必要が生ずる。Sugiura (1978)の Communications in Statistics-Theory and Methods におけるバイアス補正AICに習い、バイアス補正DIC をまず提案し、次にこれを改良して、候補となる複数のモデルから、望ましいMS-AIDSモデルのレジーム数やパラメータ数を同定する情報量規準を提案する。
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