2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25590054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田渕 隆俊 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (70133014)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 空間経済学 |
Research Abstract |
(1) 空間経済学のフロンティア 新経済地理学を中心に空間経済学の理論を包括的にレビューし、主要な問題点を洗い出した。同時に、政治学や都市社会学や都市工学など隣接学問の文献調査も広範に行った。都市内土地利用に関する地理情報システムデータを収集し、経済活動の空間分布や地価形成などの記述統計分析を行うことによって実態把握につとめた。都市空間の構造を明らかにすることと並行して、都市経済学における地価の空間分布に関する理論的研究を行った。 (2) 新経済地理学と新貿易理論の実証研究 国際貿易のデータと国別経済指標をもとにして、記述統計分析を行った。現在、約30の産業分類別に60 の主要国間の貿易額と国別経済指標のデータベースを数年間に渡って構築しつつある。これらを最大限活用することによって、時系列・横断面に関するさまざまな規則性を調べた。国際間の輸送費用や関税障壁を表す指標は、Head-Mayer(2004) の手法を用いて、貿易自由度を推計することによって可能である。各国の需要と生産シェアの分布を調べ、各国の労働賃金などのデータを用いて、過去の文献の理論の妥当性を調べた。 都道府県間の人口移動データを戦後から毎年収集し、都道府県別の社会経済指標のデータベースも作成しつつある。さらに、数ヵ年の地域間産業連関表から、9地域の地域間交易額のデータを得ることができるので、国際貿易と同様の計量分析を開始した。ただし、国内の場合には、輸入と輸出の影響を無視することができないので、港や空港における物流データも収集する必要がある。以上の準備をした上で、空間経済学の一般均衡モデルに統合しつつ、実証分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この一年間のあいだに、本プロジェクトに密接に関連した学術論文を3本公表し、それらの一部を国際会議や国内の学会で報告し、多角的な議論を重ねた。学術論文の具体的なテーマは、都市のミクロ経済学的基礎、首都への経済集積に関する理論と実証、地方政治と経済地理学などである。 一方で、さまざまな記述統計分析を行うことによって実態把握につとめ、理論分析との整合性を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 空間経済学のフロンティア 平成25年度に構築した空間経済関連のデータベースを用いて、計量経済分析を行う。また、平成25年度に構築した都市内土地利用に関する地理情報システム(GIS)データベースを用い、都市における土地利用や地価形成を調べる。ロバストな分析結果が得られるまで実証分析を行うが、都市経済理論の分析も並行して行う。 (2) 新経済地理学と新貿易理論の実証研究 引き続き国際貿易のデータベースを整備する。特に平成26年度は、水平的製品差別化が進行したOECD 諸国間の貿易だけでなく、垂直的差別化が進んだ南北間の貿易にも焦点を当てながら、データベースの構築を行い計量経済分析を行う。平成25年度に得られた記述統計分析を発展させ、自国市場効果や立地優位性の効果の分析を行い、過去の文献における実証結果と比較する。現在東アジアでは自由貿易協定が進められようとしている。EU統合の前後の分析を行うことによって、東アジア地域の統合による効果をcounterfactual にみることができる。 平成25年度に得られた記述統計分析をもとにして、地域間人口移動と地域の効用水準の関係に着目し、新経済地理学の理論の検証を行う。さらに、輸出入の影響が大きい場合には、たとえば中国や韓国をモデルのなかに組み込むことによって、新たな推定作業を行う。こうして得られるであろう結果をもとにして、自国市場効果や立地優位性の効果を調べる。また、所得や効用水準の地域間格差や地域経済成長率に関する分析を行い、わが国の地域経済システムの実態を明らかにし、地域の経済厚生に関して何らかの政策的含意を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大学の本務が多忙のため、研究報告のための旅費の一部を使用できなかったため。 研究報告のための旅費に充てる予定である。
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