2015 Fiscal Year Annual Research Report
なぜ日本企業はリスクをとらないのか?実証的解明への挑戦
Project/Area Number |
25590067
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内田 交謹 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80305820)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リスクテイキング / コーポレートガバナンス / 文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本企業のコーポレートガバナンス改革に関する実証分析を行い、機関投資家や外国人株主の持株比率が高い企業が、株主重視のコーポレートガバナンスを求める株主の需要に応えるためにさまざまな面で好ましいコーポレートガバナンス構造を採用する傾向にあること、ストックオプションもその一環として採用されているため、米国と異なり、リスクテイキングにはつながっていないことを明らかにした。この研究は、Journal of Financial and Quantitative Analysis に掲載が決定した。 また、上記の日本企業の行動の背後にある経営者の考え方を探るため、平成26年度に実施したアンケート調査の分析を行った結果、今なお機関投資家・外国人株主よりも従業員を重要なステークホルダーと認識する経営者が多く、株主価値最大化が企業目標としてそれほど重視されていないこと、業績悪化時に工場閉鎖等を実施しても従業員リストラは可能な限り避けようとすること、リスクテイキングについては企業の財務健全性や従業員の雇用を損なわない程度で行うと考えていることが明らかになった。上記論文の結論と併せて、これらの結果は従業員重視による安全運転志向が、日本企業がリスクを取らない重要な理由の一つであることを物語っている。 国際財務データを用いた研究では、平成26年度に実施した文化特性とリスクテイキングに関する分析を期間を延長して実施し、不確実性回避や個人主義の程度がリスクテイキングに影響するという結果を得た。現在、国内外の研究者とのディスカッションを行いつつ、論文を執筆している。 これらの分析結果は、学会や実務家向け講演で取り上げ、広く社会に発信を試みた。
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