2013 Fiscal Year Research-status Report
コンテンツ産業の進化・変動と生産消費者に関する実証的研究
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25590071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 綾子 東京大学, 大学院情報学環, 特任助教 (10597941)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コンテンツ産業 / 産業構造 / システム / 進化 / 変動 / 技術変化 / 生産消費者 |
Research Abstract |
本研究は、コンテンツ産業の進化・変動について、技術、制度、生産行為など諸要素の相互作用によってシステム全体が変更されていくという観点から解明しようとするものである。特に、デジタル化と生産消費者の拡大ないし顕在化は、従来の産業構造を大きく変容させるものであると考えられるが、先行研究ではその裏付けが理論面・実証面ともに必ずしも十分ではなかった。 初年度である本年度は、主に、(1)既存の定量データを用いた試行的な分析の実施と、(2)文献調査による理論的枠組みの強化を図った。(1)前者では、既存データを用いて、生産消費者が使用する制作ツールと各種の生産行為との関係性を分析した。その結果、デジタル対応した制作ツールの使用と、公開を前提とするような生産行為との有意な関係性が示された。(2)後者の文献調査に関しては、情報技術と産業構造の変化に着目して、産業構造論やイノベーション論、新技術の採用・普及、技術受容、情報経済などを援用した理論研究を試みた。また、次年度の本調査に用いる測定項目の設計に向けて、消費者行動研究や社会心理学に関する文献サーベイを行った。 本年度の研究成果は、国際ポピュラー音楽学会(IASPM)第17回大会、第12回情報科学技術フォーラム(FIT2013)、社会・経済システム学会第32回大会、経営情報学会2013年秋季全国研究発表大会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度の本調査に向けた測定項目の検討に若干遅れが生じているものの、既存のデータを元に試行的な分析を試みたことにより、当初の研究目的の一つである「デジタル化と消費者による生産行為の関係性」解明の一端において、研究内容が部分的に大きく進展した。そして、国内外の学会大会では定量的な分析結果の一部について発表を行うことができた。その分析結果および学会発表を通じたフィードバックと、概ね当初の計画通りに実施された文献調査および理論研究によって、次年度の本調査に向けた仮説がより絞り込まれてきている。そのため、研究プロジェクト全体としては概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査分析を踏まえて、今後は引き続き理論的枠組みと分析手法の強化を図るとともに、本調査に向けた仮説検証モデルと質問項目の精緻化を図る。その上で、インターネット調査会社を利用したアンケート調査を実施する。この調査で把握しようとしている課題に関して、一度にアンケート調査を実施すると質問項目が膨大となり、回答データの精度が低下してしまう恐れがある。そのため、調査は複数回に分けて実施する予定である。データ収集後は、理論とデータを照合しながら分析を進め、本研究の目的であるコンテンツ産業の進化・変動の解明を目指す。研究費等の制約上、十分な量・範囲のデータを取得できるとは限らないため、取得したデータの特徴を踏まえながら、事例研究や理論研究と併せて考察を行うつもりである。さらに、分析結果に対しては、本研究が取り扱う産業分野のみならず広い視点で多角的に考察し、高度情報通信ネットワーク社会が発展する現在、社会・経済・産業の諸分野において従来型の構造が大きく変動している実態と照らして、現代の産業構造の変化を捉えるための一助となるような考察の提示を目指す。これらの研究成果は国内外の学会で発表を行うとともに、学術論文としてまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度である平成25年度において、既存のデータを元に試行的な分析を試みたことにより、当初の研究目的の一つである「デジタル化と消費者による生産行為の関係性」解明の一端において研究内容が進展した。この成果を盛り込んだポスター発表を国際学会で行ったために、平成25年度の旅費が当初計画よりも上回ることとなった。そのため、年度の途中において、平成26年度の研究費から前倒し支払い請求を行った。この時点では、次年度の本調査に向けた予備的調査を平成25年度中に実施する予定であったが、その後、年度内に予備的調査を実施しないこととしたため、この分の研究費が次年度使用額として生じた。 初年度に実施した試行的なデータ分析と文献調査を元にしながら、平成26年度は引き続き理論的枠組みと分析手法の強化を図るとともに、調査項目の設計を行う。そして、インターネット調査会社を利用した調査を実施する予定である。このための調査費用として、平成26年度の研究費の7-8割方を充てる予定である。このほかに、データ整理や専門知識の教示を得るための人件費、分析手法と理論的枠組み強化のための資料・書籍等の購入費用、学会・研究会等への出席のための旅費などが必要となる見込みである。
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