2013 Fiscal Year Research-status Report
個別化医療の時代に出現した新たな創薬ベンチャー・モデルに関する研究
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25590073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
西村 訓弘 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30402689)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / イギリス / 台湾 / 非営利団体 / 創薬 / ビジネスモデル |
Research Abstract |
個別化医療の浸透で創薬ビジネスに変化が起こっている。本研究は創薬分野に台頭しつつある非営利の新薬開発の実情を調査し、体系化を目指している。平成25年度は文献調査から非営利団体による新薬開発(NPO創薬)の事例として英国Cancer Research UK(CRUK)が先行モデルであると判断し、英国での実態調査から研究を開始した。この結果、CRUKが寄付による税控除対象団体として認定されており、数百億円規模の寄付金を集め本格的な新薬開発を実施していること、また、開発費用を大幅に縮減することで個別化医療に伴い収益力が低下した大手製薬企業に新薬候補を提供する有力な開発者となっていることが判明した。またCRUKが非営利であることから、開発する医薬品の優先順位が収益主義の選択から、社会的要求による選択へと移行し、結果的に英国民にとって理想的な新薬開発が実現できることも明らかとなった。アジア圏の実情把握は、台湾での訪問調査から開始した。台湾では仏教団体が設立した慈済基金会の事例が注目された。慈済基金会は創薬は行っていないが、寄附基金を基に大規模病院を5か所設立しており、現在では台湾の高度医療を支える中核的な医療機関となっている。施設建設等のインフラ費用は寄付によるが、治療にかかる費用は医療保険適用で行われており、非営利と公的医療制度を混在させた仕組みの運営であり、この方式を活用することで、医療収入のみによる病院経営(公的制度を用いた営利目的相当の経営)では困難である「患者にとって最も良い治療」を選択することが可能となっている。 以上のように、非営利に基づく運営システムを医療に導入することが、患者本位の医療を実現する方法として有効に機能する可能性も見出された。このため、平成26年度はNPO創薬のビジネス上の可能性だけではなく、社会変革に与える可能性も考慮しながら研究を深めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
欧米とアジア圏における実態調査を行うことを目的としており、その端緒となる機関との情報交流ができたことから世界規模での全体像を把握する目途が立った。平成26年度においてその詳細を調べることと、残る地域である米国における実態調査を行うことで、当初計画していた目標を十分に達成できると考えている。また、研究計画段階では気づかなかった非営利の仕組みを医薬品開発に導入していくことの価値として、社会正義の実現につながる可能性が見出されたことには意義がある。本研究の成果として最終的にまとめあげる成果では、ビジネス上の効果に加え、社会改革への効果について新たな提言を行うことを追加目標とし、本研究の質を高めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
残る地域である米国における実態調査を行うことで、NPO創薬が果たすべき役割とその理想的なビジネス・モデル(収益構造、組織、運営の在り方など)を総合的に考察し、理論構築を行う。以上の考察を行うことで、個別化医療の時代を迎えて新たな成長段階に入ったバイオ産業において、その原動力となりうる「NPO創薬」の役割と急激に変化する創薬ビジネスに適応するために試行される新たな取り組みの動向と戦略について体系化する。さらに、研究成果を基に日本において実行すべき具体的な施策についても考察し、提言としてまとめる。また、平成26年度はNPO創薬のビジネス上の可能性だけではなく、社会変革に与える可能性も考慮しながら研究の質を高める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一部の海外調査について科研費以外の予算にて対応することができたため、その分の経費を使用せずに実施することができた。このため、余剰となった額を平成26年度の調査用旅費として活用することにした。 平成26年度は米国での調査等、海外調査で渡航費用が必要となるため、その費用として活用する。
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Research Products
(3 results)