2013 Fiscal Year Research-status Report
ホスピタリティ性を発揮する感情労働者への組織的支援モデルの構築
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25590082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Bunri University of Hospitality |
Principal Investigator |
田村 尚子 西武文理大学, サービス経営学部, 教授 (00458598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 亨 新潟国際情報大学, 情報文化学部, 教授 (50453460)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 感情労働 / ホスピタリティ / 精神的健康 / 組織的支援 |
Research Abstract |
研究初年度である平成25年の研究計画は、1.「感情労働」に関連する文献、資料の入手・狩猟、2.上記1を基に、これまでの研究を多面的にサーベイし、3.その上で、感情労働者への組織的支援の基本モデル(仮)の構築、である。 1に関しては、日本語論文・資料は、概ね入手することができた。海外文献に関しては、論文等で比較的引用の多い主要論文を入手した。 2に関しては、「感情労働」を巡って研究蓄積のある心理学、社会学の各主要な論点を本研究の目的に即しまとめ、整理をした。具体的には、心理学領域からは、感情労働の行使による心理的影響-職務満足、ストレス、バーンアウト-について客室乗務員、銀行員等様々な職種を対象に実証的に研究したものに着目し、感情労働の機能・心理的課題について整理した。社会学領域では、感情労働者への管理者による統制(訓練、監視、評価等)の実態等の研究に着目し、人材育成、組織制度の観点から検討した。さらに組織的支援に関する知見を得るため、上記文献の中から上司の支援、所属チームの在り方と感情労働者の精神的負担との関係性等を実証した研究成果を抽出した。また、過去に行った感情労働者へのインタビュー調査データを本研究の視点で見直し、組織的支援の具体的方策を抽出・整理した。 3に関しては、2のサーベイを行っていく中で、組織的支援を行うマネジメントの面から3つの仮説が導出された。その仮説を基に、ホスピタリティを発揮する感情労働者への組織的支援基本モデル(仮)を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、「感情労働」を行う対人サービス従事者が、精神的健康を保持しつつ、顧客に対しホスピタリティを発揮・実践できるような組織的支援モデルを構築する、ことである。 研究実績の概要で既述したように、構築した「感情労働者への組織的支援の基本モデル(仮)」の検証の一環として、3社・6名にインタビュー調査を行った。具体的なインタビュー先は、感情労働者を組織的に支援しているホスピタリティ性の高いタクシー会社(代表取締役会長・社長・ドライバー2名)、ホスピタリティ性の醸成や感情労働者への組織的支援を検討しているホテル(支配人)、企業としての公式な組織的支援のない外資系ホテル(コンシェルジュ)である。インタビューの結果、モデルにおける仮説の1つである同僚・上司との関係性(チーム力)の重要性が明らかにされるなど、検証は徐々に進んでいる。 また、研究の達成度と質を高めるため、他の研究者より今後のインタビュー対象者に関する助言を得たり、看護専門学校の現役看護師と効果的アンケート調査法を討議するなど、幅広い視点からの情報収集も行っている。以上のように、研究計画にほぼ則した進捗状況であり、達成度は「おおむね順調に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、1.さまざまな業種・職種に共通する基本支援モデルを更に精緻化する、2.さまざまな業種・職種等の特性に対応した応用モデル構築のための準備、3.研究報告・発表、である。 1に関しては、対象先を吟味した上でインタビューの件数を増やし、引き続きモデルの検証を行う。その中には、既にインタビューを行った組織も含める。モデルの軸となっている仮説に関し、細部に亘り精査を行う。たとえば、上司が行う感情労働者への指導・支援の在り方に関し、企業を通しての指導・支援と仕事外でのプライベートな場面でのそれと効果に違いがあるのか等、現場の実態により即した状況を想定して検証を行う。 2に関しては、上記の共通基本モデルが構築された上で、次に業種・職種毎の特性に応じたモデルを検討する。その前提として、今年度は業種・職種毎の特性に関する既存データおよび関連資料を精査する。たとえば、職種毎の特性を知る一例として、顧客と感情労働者の関わり合う時間の長短に着目する。単発・短時間対応のファスト・フード店員と長期に関わる介護施設の職員では求められる感情労働技術にも違いがあり、したがって支援の方法も異なってくるといえるだろう。 3に関しては、所属する学会において研究の中間報告を行う(6月に発表予定)。12月発行予定の西武文理大学紀要に研究報告を投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.年度末に宿泊を伴うインタビュー調査を行ったが、その経費(旅費、宿泊費、謝金等)が未決済である。2.複数のインタビュー調査でIC録音したものを当初業者に依頼し文字化する予定であったが、予想以上にプライバシ―に関わるものが多く、また、発表準備の為急ぐ必要があり、やむを得ず当方で行った。 出張経費及び情報機器の経費に充てることを考えている。
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Research Products
(1 results)