2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25590089
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
中森 孝文 龍谷大学, その他部局等, 教授 (20397607)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 不合理 / マネジメント / 中小企業 |
Research Abstract |
本研究は、不合理を活かす経営の意思決定の要因やプロセス、それを成功に導く要素を明らかにすることにある。それには、不合理なマネジメントにより付加価値の高い事業を行える経営者と、一般人との差を見ることが不可欠である。そこで、本研究は3つの段階を経て行うことにする。まず、そもそも不合理とは何かについて、先行研究や一般人への意識調査により定義づける。また不合理判断の尺度を作成し、当該尺度を用いて影響要因を調査する。次に、一般人の不合理判断や影響要因と経営者のそれとの比較を行い、不合理の判断における重要な要素を特定する。最後に当該不合理の判断要素の開示方法について研究する。 初年度(平成25年度)は、不合理とはなにかについて定義付けし、不合理のマネジメントに影響する要素を明らかにするために、先行研究の調査や一般人に対する意識調査を実施した。そして、一般人の考える不合理とはどのようなものか、また、どのような経験や思考が不合理な意思決定に影響を及ぼしているのかについてアンケート調査を実施した。 具体的な手順は次のとおりである。まず経済学や社会学の分野における合理性の意味について先行文献等を調査した。先行文献調査と並行して、筆者がコーディネーターを努める経済団体の経営者塾にて、経営者が自慢する不合理な経営判断とはどのようなものなのかについて複数人の経営者からヒアリングした。 また、一般人に対するアンケート調査を2回実施した。まず、地方の商工会議所等での講演会の協力を得てプレテスト(アンケート調査)を実施した。当該プレテストで得た不合理の要素と、経営者らへのヒアリングから得た不合理の判断を反映させた質問項目を作成し、一般人(1200人)に対する意識調査を実施した。 その結果、複数の不合理尺度と影響要素を明らかにした。当該結果をもとに学術論文を作成中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、我が国の中小企業経営者に自信を取り戻させ長期的な視点での競争有意性を保持することを促すことである。コスト競争や合理性を過度に意識するが故に、競争力の源泉である人材をはじめとする多様な経営資源の維持・獲得ができず、結局は短期的な利益の追求にとどまり継続できない企業が増えている。このため、短期的には不合理な選択や意思決定と思われるものであっても、長期的には極めて有効な経営判断(マネジメント)ができる経営者の、判断の要素や方法を明らかにするとともに、当該判断の的確性を外部のステークホルダー(特に金融機関)に理解してもらうための情報開示方法を明らかにすることが、本研究の目的である。 それには、まず、そもそも不合理とは何かを定義し、一般人と経営者の間で、不合理のマネジメントに関する意思決定の判断要素に差があるのかどうかを明らかにせねばならない。加えて、判断要素の基になっている経験や思考などについても比較分析する必要がある。 初年度(平成25年度)は、経済学や社会学における合理性についての先行文献等を調査した。また、複数の経営者らに対して自慢すべき不合理な意識決定について質問し、いくつかの不合理判断の事象をヒアリングした。さらに、産業支援機関等の協力を得て講演会の場で一般人に対してアンケート調査を実施した。その結果、一般人の不合理(合理性)判断の要素が特定できた。それらを基に質問項目を作成しアンケート(調査人数1200人)を実施したところ、複数の不合理尺度とそれらに影響する複数の要因が判明した。 研究2年目(平成26年度)は、不合理なマネジメントにより持続的な成長を果たしている経営者に対する意識調査やヒアリングを予定しているが、初年度の研究はそれらにつながるものであり、概ね順調に研究が進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度は経営者に対するヒアリングや一般人に対する意識調査を通じて、不合理尺度とそれらに影響する要因の関係性を明らかにした。 2年目(平成26年度)以降は、リーマンショックのような不況時においても赤字転落をすることなく成長を続けている経営者らに対して、不合理なマネジメントの実態についてアンケートとヒアリングを行う。それらを通じて、不合理のマネジメントに有効に作用する要因(経験や情報、思考など)について理論化を行う。 また、本研究では、不合理のマネジメントの的確性を外部のステークホルダーに理解してもらうための、情報開示方法についても検討することにしているが、初年度の一般人に対する意識調査によって、金融機関の社員のみが不合理判断において特異な動きを見せた。中小企業にとって円滑な資金調達には、自社のマネジメントに対する金融機関の理解が不可欠であるが、不合理なマネジメントに対する金融機関の理解が得られなければ、結局は、近視眼的なマネジメントをせざるを得なくなる。このため、金融機関の不合理判断に対する判断要素や、開示に対する信頼性要素について、金融機関に対してヒアリングや意識調査を行う予定。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、不合理なマネジメントを通じて持続的な経営を行っている各地の経営者に対して、初年度からヒアリング調査を実施する予定であったが、一般人に対する丁寧かつ大規模な調査を行い、その結果をもとに経営者の判断と比較する方が効果的であると判断した。このため、初年度に一般人に対する意識調査を行い、経営者に対するヒアリングは、一般人に対する意識調査項目の検討に資する範囲でのヒアリングにとどめた。その結果、経営者へのヒアリング回数が少なくなった。しかし、一般人の不合理判断に影響する要因が、初年度の調査でより明確になったために、それらをもとに次年度に経営者らへのヒアリングを充実させることができる見通しである。このため、83,999円を翌年度に繰り越した。 初年度に、一般人の不合理判断に影響する要因を明らかにしたことから、初年度の成果をもとに、2年目(26年度)は経営者らに対してアンケートとヒアリング調査を行う予定。当該ヒアリングのための旅費として繰り越し金を活用する予定。
|