2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25590089
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
中森 孝文 龍谷大学, その他部局等, 教授 (20397607)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 不合理 / 経済的不合理 / 世間的不合理 / 意思決定 / マネジメント / 社会的合理性 / 正義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、不合理を活かす経営者の意思決定の要因やプロセス、意思決定を成功に導く要素を明らかにする。それには、不合理なマネジメントを付加価値に結び付けられる経営者と、単に不合理な意思決定をする一般人との違いを明らかにすることが必要になる。本研究は3つの段階を経ることにしている。不合理判断を先行研究から定義づける。次に不合理判断の結果が経営にどのような結果をもたらしているのかを定量分析により明らかにする。最後に、不合理の尺度を作成し、不合理な判断要因を特定する。 初年度は、一般人が不合理と感じる事項ついてプレテストを実施し、質問項目を検討した。プレテストを基に、思想信条、経験、判断に影響する情報などに関するアンケートを行い、一般人1200名を超える回答を得た。 2年目は、初年度のアンケートで得たデータを用いて、不合理な意思決定に影響している要因を特定した。当該結果を反映させて、一般人と経営者との差を見るために、経営者に対する意識調査を行った。過去5年以上にわたって黒字経営でかつ経営者が交替していない中小企業(従業員100名以上300人以下で5年前に比べ従業員を増加させている企業)1039社を抽出し、不合理判断、思想信条、経験、情報に関する項目を用いてアンケート調査を実施し217名から回答を得た。 3年目は、当該アンケートを基に、経営者の不合理判断を促進する要因を特定した。企業の財務状況やマーケットポジションに関する指標を用いて、不合理判断の結果が経営にとってプラスなのかどうかについて分析した。定量分析結果の検証と、定量調査では得られなかった具体的な不合理判断を調査するために、複数人の経営者にヒアリングした。それらの結果をとりまとめ、博士論文を完成させた。 4年目は、研究をさらに深めるために延長し、不合理判断に関する具体的なエピソードを増やして著書を執筆する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、不合理を活かす経営の意思決定の要因やプロセス、その意思決定を成功に導く要素を明らかにすることにある。そのために、3つの段階を経ることにしている。(1)経営判断における合理性とは何かについての定義づけ。(2)不合理の尺度を作成し、不合理判断の結果が経営にプラスかどうかの分析。(3)不合理な経営判断の促進要因の特定である。 まず経営判断における合理性に関する定義であるが、経済学、経営学、社会学の先行文献等を調査し、合理性には論理的合理性、経済的合理性、世間的合理性の3つの合理性の存在を明らかにした。そして、不確実性の高い状況下では、経済的合理性と世間的合理性をもとに判断をすると「人まね」をすることが合理的であることを明らかにした。 不合理判断の結果が経営にプラスかどうかの分析では、業歴の長い企業の経営者ほど、業界での売り上げランキングが高いほど、自己資本比率が高く財務状況がよいほど、短期的に経済的不合理な判断(目先の利益に執着しない判断)をしていることが明らかになった。 不合理な経営判断の促進要因の特定では、できる上司との仕事経験や異分野・異文化の経験が短期的に世間的不合理な判断(人まねしない判断)を促進することが分かった。また、一般人と経営者では、同じ人まねをしない判断でも、目先の利益に執着するかどうかで違いがあった。人まねをしない経営者は目先の利益にも執着しないことがわかった。 その結果をとりまとめた博士論文を完成させ、神戸大学から博士(経営学)の学位を授与された。 本研究成果を基に著書を出版する予定であるが、目先の利益に執着せず、かつ、人まねをしない経営判断を促進する要因(特に経験)が、定量調査からは十分に特定できなかった。このため、不合理な経営判断を活かしている経営者(複数)にヒアリング調査して、要因を明らかにしたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は博士論文をベースに著書を刊行する予定であるが、不合理を活かす経営者へのヒアリングを充実させ、具体的なエピソードを多く集めたいと考えている。経済的不合理(目先の利益に執着しない)、世間的不合理(人まねしない)に関する具体的な経営判断をヒアリングするとともに、その判断ができる理由(不合理な経営判断を促進する要因)を明らかにする予定である。 これまでのヒアリングでは、経営者が経済的不合理、世間的不合理な経営判断をする際に、当該判断は人間として正しいかどうか「正義」かどうかを見ている傾向にあった。つまり社会的合理性について判断していることが分かってきた。今後は経営者へのヒアリングを重ね目先の利益に執着せず、人まねをしない経営判断と、社会的合理性の関係性について明らかにする予定。
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Causes of Carryover |
概ね研究計画どおりに研究を行った。一般人や経営者の不合理な経営判断に関する意思決定に関するデータを入手し、定量分析を行ったところ、不合理な判断の経営への影響や、不合理判断の影響要因などを特定できた。当該結果をもとに博士論文を執筆し、神戸大学から博士(経営学)の学位を授与されるなど、計画を上回る成果も達成できた。当該学位論文をもとに著書を執筆することを出版社から提案されたが、それには不合理な経営判断の具体的事例の充実が必要である。これまでの研究で研究効率を高め、事例のヒアリングに必要となる旅費に使用する費用を節約できたことから、次年度に繰り越して費用を使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果をもとに著書を出版する予定であり、それには不合理な経営判断の具体的事例の充実が不可欠である。次年度は旅費を中心に研究費を支出し、さらに著書に紹介する新たなデータ分析に必要な費用として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)