2014 Fiscal Year Research-status Report
マーケティング研究の実践論的転回のために ― 実践としてのマーケティング研究
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25590092
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
薄井 和夫 埼玉大学, 経済学部, 教授 (60151859)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 実践としてのマーケティング / 実践としての戦略 / 実践ベース・アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
実践としての戦略、実践としてのマーケティング研究と、クリティカル・マネジメント、クリティカル・マーケティング研究との関連を主に検討した。「クリティカル」研究は、特に英国では広く浸透していることが、エディンバラ大学の教員などとの討論の結果、明らかとなった。 この検討の過程で、等しく「実践」ベースの研究といっても、認識論(epistemology)の違いにより、内容や対象に差が生じることが明らかとなった。認識論の対立は、「クリティカル」研究の中で強く提起されているものであるが、この問題は、実践としての戦略、実践としてのマーケティング研究に通底するだけでなく、ナレッジ・マネジメント(知識経営学)研究やアントレプレナーシップ研究でも確認することができ、現代経営学・マーケティング研究の主要な論点を構成していると理解できる。 認識論上の客観主義は、世界の主流をなす研究潮流であり、コンテクストを越えた普遍的な言説や理論・モデルを求めようとするものであるが、こうした認識論では、戦略計画やマーケティング戦略、ナレッジ・マネジメント、アントレプレーナーシップの各分析において、「現場」の実態=実践のあり様を分析することが困難になる。これに対して、認識論上の実践論ともいうべき視点によれば、いかに戦略や計画が普遍的(脱コンテクスト的)な形で示されようとも、その実行は、現場のコンテクストに規定され、「状況依存的(situated)」な理解と実践が行なわれる。 本年度の研究において、この認識論上の対立が経営学・マーケティング研究の各分野に浸透していることが確認できたことは、研究を今後進展させていく上で、非常に大きな成果であったということができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テーマを貫く認識論上の論点を析出することができ、これによって、実践としての戦略、実践としてのマーケティング研究を進展させる礎を築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究の最終年度として、3年間の成果をまとめる研究論文を作成する予定である。これまでの研究からその基礎は形成されているということができる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、主に、①経済学部棟耐震補強改修工事により、学生アルバイトによるデータの整理が困難であったため謝金を執行しなかったこと、②招聘予定教授の都合により、招聘が次年度送りになったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、最終年度として、海外出張と研究のとりまとめを行なうため、全額を執行する予定である。特に旅費については、研究発表旅費、エディンバラ大学での研究旅費、研究とりまとめのためのJohn Dawson教授の日本への招聘が大きな項目となる。
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