2014 Fiscal Year Research-status Report
動機と情報内容を組み込んだ口コミ効果の測定モデルの開発
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25590098
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
竹村 正明 明治大学, 商学部, 教授 (30252381)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 口コミ / 革新的製品 / 動機 / マーケティング |
Outline of Annual Research Achievements |
この年度の成果は、動機を持った口コミ効果について実証研究のモデルを開発したことである。同時に、実証データの収集を行った。われわれの想定する動機を持った口コミ効果とは次のような特徴を持つ。 第1に、口コミは革新的製品の普及に強く影響をすることである。革新的製品は、しばしばそれまで消費者に使用経験がなく、いったい何がどのように効果的なのかまだわからないことがしばしばである。そのようなタイプの製品では、開発メーカーが製品の良さをいくら強調しても、消費者が反応するとは限らない(それが可能であれば、成功する企業ばかりになるはずである)。消費者は、できるだけ客観的な評価によって革新的製品の採用(つまり購買)を決定しようとするのである。その最も効果的な評価が、使用者の経験、つまりは口コミなのである。口コミ効果とは文字通りの狭義の意味では、革新的製品の普及に貢献することである。 第2に、口コミには作動条件が必要であることである。口コミは、革新的製品の使用者がその使用経験に基づいて感想を他者に伝達することであるが、それはいつでも起こるとは限らないのである。口コミは効果あると言われ、実際そのとおりであると実践的には高い評価を得ているが、一体どのようなときに口コミが起こるのかまだよくわかっていないのである。われわれが開発した動機を組み込んだ口コミ効果モデルは、その理由のひとつとして動機を予想した。ここでいう動機は、心理的な理想モデルのことである。それは、自分が理想とする何かに近づけるので、この商品の仕様経験をしゃべろうとする、という論理を持っている。われわれはどのような条件で口コミが作動するかを予想した。 そして第3に、それらの要素が統合的に作動することである。口コミは動機がなければ作動せず、革新的製品は口コミがなければ普及しないのである。それらは統合的にモデル化される必要があるのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本来は、最終年度にそれまでに開発した実証モデルのデータ収集を行う予定であったが、今年度実施できたことである。それは、以下の3つの理由による。 第1は、実証モデルの開発が予定よりも早くなったことである。それは海外研究協力者が、年度内に2回の来日を実現し、議論が深まったことである。その内の1回は本研究予算で招聘できた。この来日によって、インターネットベースで行っている通信よりもはるかに早くモデルを確定することができたのである。 第2に、実証調査を依頼する企業の打ち合わせが実現したことである。海外研究協力者の来日に合わせて実証調査の依頼先企業と綿密な打ち合わせが実現したことである。実証研究を行う場合、依頼先の企業がどの程度われわれの調査内容を理解できるかは研究成果に直接影響する。そのために、われわれは研究のプレゼンテーションを行い、調査の内容を理解してもらうように務めた。それによって、次の質問票設計の作業が極めて容易になったのである。 第3に、質問票調査設計時の課題を直接解決したことである。この課題は主に2つある。ひとつは、質問の表現そのものである。われわれはこの調査をアメリカとの比較において行うため、英語からの翻訳が重要であった。そのためダブルインタープリテーションを行った。この作業は、英語から日本語に訳し、それをもう一度英語に訳すことであるが、それぞれにおいて2名以上のネイティブに確認してもらう必要がある。この作業を事前に行ったので、作業が早まった。もう一つは質問票のデザインそのものである。改行ひとつ間違えると質問の意図を間違えてしまうことがあるので、直接デザインを確認しながら作業を行えることは研究推進に貢献した。 何よりも、われわれの工夫が本研究の進捗度を早めている。このような些細な工夫を少し行うことで、研究は計画以上に進捗するということが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の作業は、最終年度であり、予定通り研究成果の発表を数回行う。まず最初は、先行的に行った実証モデルの検証作業である。モデルは完成しているので、そのデータを統計的に安定しているかどうか示すことである。データの並びや欠損値のチェックに時間がかかるが、8月までには最初の結果を発表できる予定である。 このモデルはまずは、複数の構成概念が全体としてどのように関連するかを示す構造方程式モデリングによって検証する。構造方程式モデリングは、本来は変数間の因果メカニズムを説明する仮説が必要で(なければ次元を縮約する因子分析にすぎない)、それに基づいて検証しなければならない。ところが、多くの調査では、先行研究で扱われている変数の論理的関係を、先行研究の仮設に基づきとして、新たな仮説をつくってしまっている。われわれは、もちろん一部には先行研究の質問ツールを使って、本研究がどの研究ストリームに属するかを示しているが、むしろ、採用する変数がなぜどのように口コミに影響するか、を明示したモデルを開発した。 われわれの作業は、したがって、まず構造方程式モデリングによって変数全体の関係が、われわれの想定するメカニズムに従っているかどうかを確認する。特に、どのような動機がなぜ(心理的に理想化された役割モデルの存在があるかどうかである)、口コミを作動させるのかを検討することできる。この仮説の言わんとするところは極めて明確である。理想的なモデルを想定することができるならば、それに近づきたいという動機が口コミを駆動させる、ということである。これこそわれわれが検証しようとしてきた動機を持った口コミ効果モデルである。 ここから貴重な実践上の課題が示唆できる。それは、理想的なモデルの存在である。われわれは、その理想モデルの開発について、新しい議論を進めることもできるだろう。
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Causes of Carryover |
当初予定していた消費者調査をウェブ調査に切り替えることに予算の節約が可能になった。この予算の使途として、さらに時間を変えた消費者調査が可能になると期待できる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
同様の比較調査を計画している。これによって消費者の学習効果を推定することができる可能性が出てきた。そのモデルづくりはまだしていないが、前年度調査が効率的に進んだのでそれが可能になった。
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