2014 Fiscal Year Annual Research Report
「脱家族化」概念の拡張からみるスウェーデンの福祉・教育予算編成方法の研究
Project/Area Number |
25590119
|
Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
大岡 頼光 中京大学, 現代社会学部, 准教授 (80329656)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 脱家族化 / 福祉・教育予算 / 予算編成改革 / 年金改革 / 高齢者の就労促進 / 人生全体の視点 / 人生前半の社会保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
エスピン-アンデルセンの「脱家族化」ではケアだけが研究されてきた。本研究は「脱家族化」概念を広げ、ケアに限らず教育費の公費負担化など、家族間の経済的依存を断ちきる政策を「脱家族化」ととらえ直した。そこから「脱家族化」を徹底したスウェーデンの福祉・教育予算の編成方法を検討した。 スウェーデンは不況で財政危機の1990年代に予算編成を改革し、政治的優先順位から各分野の上限額をトップダウンで決めるようにした。高齢化率が世界一でも、高齢者への予算を削り、若者の教育費を「脱家族化」し、巨額の教育予算増を実行した。予算編成改革と巨額の教育予算増の関係、特に、不況で他の予算を削りながらも、教育予算の大幅増を可能にした予算編成方法の特徴を分析した。 注目されるのは、90年代の年金改革により年金への一般財源からの支出増が予想される中で、教育予算の大幅増が決定されたことである。全体の年金支出が増える中でも、高齢者の就労を促進する年金改革が行われ、低所得者向けの年金予算の減額には成功した。 以上の研究成果は、「人生前半の社会保障」を充実し、教育費を公費負担化して「脱家族化」をすすめるには、年金予算を減額し、高齢者の就労を促す必要があることを示唆する。 このように福祉と教育の予算を人生全体の視点からとらえ分析するには、「脱家族化」概念の拡張が有効である。家族に任せればよいという日本の「家族主義」を変えるには、ケア・福祉を見るだけでなく、教育費の親負担も考え、人生全体で問題をとらえる必要がある。大学授業料などの親の多大な教育費負担は、親への負債感をうみ、子による家族ケアの当然視につながりうる。「脱家族化」を進めるには教育など「人生前半の社会保障」をまず充実すべきである。問題を総合的に考えるには、「脱家族化」概念を拡張してケアだけでなく教育も視野に入れ、福祉・教育予算を分析していくことが必要である。
|