2013 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災後の大衆メディアの「震災観」「震災後の社会観」の構築と受容
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25590121
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
日高 勝之 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (00388787)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 福島原発事故 / 原子力エネルギー / メディア / ジャーナリズム / 昭和ノスタルジア / 記憶 / ラディカル・デモクラシー |
Research Abstract |
東日本大震災後、福島原発事故後は、災害報道、緊急報道など報道ジャーナリズムのあり方が多角的に検証されてきた。だが一方で、報道ジャーナリズムは、それ自体、震災および震災後の社会を映し出していながら、それらの思想・価値観の内容や、それらが被災地でどう受容されているかについては、これまで明らかにされてこなかった。本研究では、新聞やテレビニュースなどの報道ジャーナリズム、知的言説に現れる「震災観」「震災後の社会観」がいかなる思想・価値観を創出し、どのように社会で受容されているかを検証してきた。研究を進める過程で地震、津波などの直接的被害による東日本大震災と、原発をめぐる福島原発事故とは少なからぬ位相的差異があり、それらが報道ジャーナリズム、言説の中身にも現れていることを理解したため、とりわけ福島原発事故関連の報道メディアの検証に力点を置くことになった。そのため、日本が、広島、長崎の原爆投下を経験しながら、戦後、「原子力の平和利用」「夢の原子力」のイデオロギーが浸透し、世界有数の原発立地国になるに至った歴史的経緯や「フクシマ」後のあり方を、報道ジャーナリズムがどのように示しているかを検証することに力を注いできた。そして、昨今「昭和ノスタルジア」と総称される形で戦後の昭和への懐古がメディア、言説で広範に見られるが、それらの背後には、「原子力安全神話」のイデオロギーと通底するものがあることを、ラディカル・デモクラシー理論をメディア学に応用した言説分析的アプローチから明らかにし、「フクシマ」後の社会観構築における「昭和」への多元的な囚われのありようとその政治的重要性を、単著書籍『昭和ノスタルジアとは何か~記憶とラディカル・デモクラシーのメディア学』(世界思想社・全536頁)の中で浮き彫りにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関連資料を入手すると共に調査を進めながら、詳細な分析と検証を行ってきた。今年度は、とりわけ「原発安全神話」などの戦後言説・イデオロギーと、「昭和ノスタルジア」など昨今高まっている近過去への多元的な執着にみられる社会観との間の並行性、系譜的継承性を見出したことから、それらについての考察、および研究書籍の執筆を重点的に行い、書籍が5月末に刊行されるため、その方向性からは順調な進展をみてきた。一方、震災、とりわけ福島原発事故の事故としての深刻さ、影響の大きさ故に、新聞やテレビニュースのジャーナリズム報道を中心に考察対象となる関連のメディア記事、報道番組等が極めて大量であり、また、原発関連の関連書籍・資料等は今も刊行され続けており、それらも極めて多量であることから、「フクシマ」後のメディア的状況の包括的な整理、綜合には予想以上に時間がかかるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで推進してきた分析や考察をさらに継続・発展させ、国内外での研究発表、論文、新たな研究書籍執筆などを積極的に目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
詳細な分析と検証を行ってきたが、震災、とりわけ福島原発事故の事故としての深刻さ、影響の大きさ故に、新聞やテレビニュースのジャーナリズム報道を中心に、関連メディア記事・番組等、および関連書籍・資料が極めて大量であるため、考察、検証に予想以上に時間がかかり、未購入の資料等が数多くあることが最大の理由である。加えて、震災・原発関連、リスク、メディア・文化、政策関連の国内外の学会、シンポジウム、ワークショップ等が当該年度より次年度に多いことも理由として挙げられる。同時に、研究成果の発表が次年度に多いことも理由である。 震災、原発関連の新聞記事、テレビ番組、とりわけ原子力エネルギー、脱原発関連の新聞記事、テレビ番組、映画は現在も大量に発信され続けていると共に、関連の書籍も大量に刊行され続けているため、それらを入手して研究の推進、発展を図る。また、研究テーマと関連する国内外の学会等にも積極的に参加や発表を行うことで、研究の発信をすると共に、その後の研究内容の綜合への充実化を図る機会とする。加えて、被災地の現地調査・取材も行う予定である。また、5月末に研究成果である単著書籍『昭和ノスタルジアとは何か~記憶とラディカル・デモクラシーのメディア学』(世界思想社・全536頁)が刊行されるため、献本により研究成果を学界や社会に広く発表・還元することで、積極的な研究発信を行う予定である。
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Research Products
(4 results)