2013 Fiscal Year Research-status Report
地域を基盤とするソーシャルワークへの対話的行為理論の活用に関する調査研究
Project/Area Number |
25590133
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小野 達也 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (30320419)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会福祉 / 地域福祉 / コミュニケーション / ハーバーマス |
Research Abstract |
本研究の目的は、地域を基盤とするソーシャルワークに対話的行為の理論を活用することの可能性を考察することである。わが国では、今日、各地域で福祉援助の取り組みが進展している。問題を抱える人たちへの援助(個別支援)や地域社会自体への働きかけ(地域支援)が展開されている。そこで本研究は、対話的行為を地域でのソーシャルワーク実践に組み込むための理論的検討、および基礎的な調査を行うことを目指す。 本研究の鍵概念である、対話的行為をめぐって、各地域の福祉関係者と検討を進めることができた。地元の堺市だけでなく、東大阪市、吹田市、富田林市、さらには福岡県や宮崎県で研究会、勉強会を持つことができた。これによって、地域福祉実践の現場での対話的行為の実態を基礎的に把握した。特に、対話を行う際の困難性やコミュニケーション上のしょうがいを抱える人へのアプローチについての検討を進めることができた。 さらに、対話的行為の理論的な基礎となるハーバーマスのコミュニケーション論についての文献研究を進め、ハーバーマス理論の活用の現状について整理を行った。その結果、教育や医療、ソーシャルワークという対人援助領域でのハーバーマス理論は大量にとはいえないまでも一定の活用実績があることが判明した。ハーバーマス理論を地域福祉分野に適用するための条件を検討して、コミュニケーションを通しての合意形成という方法が地域福祉に親和性があることを明らかにすることができた。また、ハーバーマス理論を地域福祉の実践で活用するための条件の整備を考察して、対話的行為の基本ユニットを整理し、図化することを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は理論整理を行い、また実態把握のための資料収集とその整理をする期間としていた。対話的行為の理論に関わる文献や諸研究の収集、また、地域を基盤とするソーシャルワークに関する文献を収集し精査できた。ハーバーマスの著作は基本文献となるが、同時に重要なのはハーバーマスの理論の活用に関する文献、資料である。ここでの関心は、ハーバーマスの理論自体ではなくあくまで理論の活用にあるので、今回の研究に必要な絞り込んだ文献研究を行った。また、地域を基盤とするソーシャルワークの研究に関しては日本での研究に限定して、理論整理を行った。 また、実態把握のための基礎的な資料収集とその整理を行った。地域を基盤とするソーシャルワークの事例を収集することができた。この作業を通して対話的行為が諸実践にどのように位置づけられているのか、大阪府、福岡県、宮崎県でヒアリングなどを通して追う協を把握することができた。 さらに、現状把握や基礎的な理論整理にとどまらず、具体的な成果物を生み出すことができた。研究雑誌での発表も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、研究内容をさらに深化させて、実践現場への適用を一段と進めることを目指す。 地域を基盤とするソーシャルワークを再規定的に発展させることを志向する。ハーバーマスの概念を活用し、社会理論に基礎づけられたソーシャルワーク実践を生み出すねらいがある。実践(研究)が先行する地域福祉研究において、基礎理論との架橋が課題となっている。実践と理論をむすぶ、新たな実践理論の構築を試みる。 地域を基盤とするソーシャルワークを当事者中心、住民主体の方向にシフトさせていく。対話的行為は、主体-客体、の関係ではなく、主体-主体関係を基本とする。これまでも当事者中心や住民主体は目指されてきたが、一面的、形式的に結果するきらいがあった。対話的行為はそれを実態化し、主体としての当事者、主体としての住民を具現する。 地域の援助実践の倫理性と批判性を形成していく。対話的行為では、ある事柄に対する議論の際に、その課題に関するすべての人の意見表明が可能とされ、かつ要請される。これは地域での弱い立場の人々や声なき声という事態を考えれば地域の議論という実践に、倫理性と批判性を導入することである。地域の実践活動の反省的な見直しを生み出すことができる。 実践的に理論を修正することにより具体的な援助プロセスへの導入を可能とする。対話的行為はコミュニケーションによる行為者同士の了解、合意を重視するので、被援助者と援助者が対峙し合う場面での活用が考えられる。実際の援助プロセスの中ではアセスメント、意思決定、目標設定、モニタリング、スーパーバイズ、といった各場面で用いることができる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費が先方負担の場合があり、予定よりも少なくなった。 謝金が発生しなかった。また、資料整理も予定ほど多くなく人件費が少なくなった。 調査に関して前年よりも旅費が必要となる。また、資料整理についても作業量が増えると考える。前年度の差額分は、消化する予定である。
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