2015 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア先進国における公的扶助制度と補完的貧困政策に関する比較研究
Project/Area Number |
25590135
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中山 徹 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (40237467)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公的扶助 / ホームレス支援策 / 居住貧困 / 貧困政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、東アジア先進国におけるホームレス等の「不安定居住」層に対する支援施策と公的扶助制度、それを補完する貧困施策の現状を踏まえ、公的扶助制度の意義とあり方やその政策的課題を明らかにすることである。 2015年度は、第1に、台北市における社会救助法と市独自ホームレス施策について聞き取り調査や文献研究を進めた。社会局専任チームへの聞き取り調査で現況を把握し、民間団体では、支援策の多様化が始まっており、①就労支援策の新たな試み(当事者による街案内、珈琲販売、修繕事業)の事業化・社会的企業を志向している。②民間団体による居住支援のための賃貸住宅確保の困難さが確認された。第2に、ホームレス支援策である中間施設退所後の動向把握のため、高齢者福祉施設(台湾固有の「栄民の家」、「老人ホーム」)の概況把握と施設への聞き取り調査を実施した。第3に、East Asian Inclusive Network(日本、台湾、韓国、香港の研究者と実践者)の第4回香港開催に引き続いて、第5回台北に参画することによって、東アジアのホームレス・不安定居住層の動向や支援策の現状と方向性等を把握することができた。 この調査研究から、第1に、東アジア先進国のホームレス支援の仕組みは、それ内容は、アウト・リーチ、現場支援、中間居住施設、生活・就労支援等であり、ホームレス支援の仕組みでは似ている面をもつことである。第2に、だが、支援の根拠法の有無、居住資源のあり方の違い等、公的扶助制度のあり方の違いによって、その支援システムは異なっていおり、公的扶助制度の制限性、公的扶助制度の内容・水準と家賃等のアンバランス等の居住問題の存在が、ホームレス支援策や公的扶助制度を補完する貧困政策を採用する根拠となっている等の知見が得られた。これらの知見は従来の研究を補うものであり、ここに、研究の意義と重要性があると考える。
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