2013 Fiscal Year Research-status Report
新しい災害互助システム「被災地のリレー」の構築に向けた現場研究
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25590158
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渥美 公秀 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (80260644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢守 克也 京都大学, 防災研究所, 教授 (80231679)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 被災地のリレー / 災害救援 / 災害復興 |
Research Abstract |
1.「被災地のリレー」に関する現場研究(恊働的実践) まず、1-1 型(刈羽→野田)について、リレーの始点である新潟県刈羽村、終点である岩手県野田村において聞き取り調査を複数回実施し、始点においては、震災時に阪神・淡路大震災の被災地から救援を受けたことに対する負債感が返礼として野田村への救援を惹起したことを確認しただけでなく、野田村を救援することによって、刈羽村の復興が再構築されていることを明らかにした。また、野田村では、「被災地のリレー」という言葉が一定範囲に普及し、将来の災害時にこれを実施する機運を確認した。次に、1-0 型(野田→興津)については、始点である野田村、終点である高知県興津地区において聞き取り調査を実施し、野田村には「被災地のリレー」の試行として認識する人々はあるが、まだ広がってはいないこと、興津においては、現在進められている防災活動の活性化に一部寄与するものの、「被災地のリレー」は、まだ強く意識されるには至っていないことを確認した。最後に、0-1 型(上町台地→野田)については、始点である上町台地での聴き取り調査を終え、被災地になった場合の救援活動を受けることへの期待の存在は確認したが、一過性の活動であったことも認めざるを得なかった。1-1型については、論文としての取りまとめを行ったが、他の型を含めた総合的な考察は来年度に行うこととした。 2.「被災地のリレー」に関する文献調査 グループ・ダイナミックス研究会の場を活用し、互助関係の連鎖に関する文献を国内外の社会心理学はもとより、進化生物学や民俗学などの関連分野にわたって検討した。ただし、研究会の開催頻度を高めることができず、個々に文献を収集するに留まったため、理論的整理と被災地のリレーに関する理論モデル構築は、来年度に継続することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展している部分と、改善の余地を残した部分が混在することから、計画全体については、おおむね順調だと評価した。具体的には、現場研究では、計画段階で想定していた範囲を超えた知見を得るに至っているが、一方で、文献調査では、文献そのものの収集や整理は順調に進んでいるものの、文献調査の結果をもとに「被災地のリレー」に関する斬新な理論モデルを構築するには、未だ至っていない。グループ・ダイナミックス研究会の開催頻度が低かったことも理由の1つであり、今後は、この点に改善の余地が残った。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の現場調査をもとに、刈羽村と野田村を主な対象地として、被災地のリレーに関するアクションリサーチを推進する。その際、初年度に収集した文献からの知見を整理し、理論モデルを構築することを急ぎながら、同時並行的に、アクションリサーチを実施していく。 本計画では、現場調査と文献調査によって、今後の大規模な研究計画に対して、多様な論点を抽出し、仮説的な言説を生成することが目的であるので、グループ・ダイナミックス研究会の開催頻度を高めて、最終年度内の取りまとめを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者と研究分担者が、現場調査の対象地をそれぞれ分担しつつも、代表者が分担者の担当する地域でも分担者とともに聴き取り調査を実施する必要が出てくる可能性に備えていたが、実際には、分担者によって十分な聴き取り調査が実施されたので、代表者の当該地域での現地調査を実施しなかったこと。文献調査においては、代表者と分担者のこれまでの研究の蓄積から、費用を要する整理などが計画よりも少なかったこと。これら2つの点から、次年度使用額が生じることになった。 次年度は、現場においてアクションリサーチを展開し、グループ・ダイナミックス研究会を通じて構築される理論モデルについて、現場に赴いてその精緻化を図り、多様な仮説的言説を導出して、計画を取りまとめる必要がある。次年度使用額が生じたことを積極的に活用し、初年度に実施しなかった分担者の担当地域への代表者の訪問を実施したい。、
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Research Products
(22 results)