2015 Fiscal Year Research-status Report
定住外国人に対する母語教育と文化的アイデンティティ形成に関する社会心理学的研
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25590162
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
木村 竜也 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (20410293)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化的アイデンティティ / 在日ベトナム人 / 継承語 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、その前年度に得た聞き取りデータの分析を行った。聞き取り調査の対象者は、大阪府八尾市のベトナム人集住地域において実施されている「継承語教室(母語教室)」の参加者であるベトナム出身の両親を持ち日本で生まれた青年7名とその保護者4名であった。このうち、青年7名に焦点を当て、そのアイデンティティ確立の過程を分析対象とした。 分析は、Phinneyの民族的アイデンティティ形成に関する3段階モデルを準拠して行った。これは、アメリカの移民の青年を対象とした理論で、民族的アイデンティティの形成過程が、自らの民族性について考えることがほとんどなく、主に両親のそれをそのまま受け入れている段階である“未検討の民族的アイデンティティ”の段階、自らの民族性について、何らかの契機から疑問を感じ模索する段階である“民族的アイデンティティの模索”の段階、および自分が属する民族集団に対して否定的なイメージを持たず、自らの民族性について受け入れている段階である“民族的アイデンティティの達成”の段階を経るとするものである。本研究課題では、外国において構築された社会心理学的理論が、日本社会に適用可能かを検討することを目的の一つとしている。分析においては、この点を重視した。 分析の結果、Phinney(1990)の3段階モデルが、文化的背景を異にする、在日ベトナム人のアイデンティティ形成にも適用可能であることが示された。また、調査対象者は、継承語教室でベトナム文化に由来する要素を獲得し、それを周囲の日本人などに受け入れられたことによって、自分の中にあるベトナム文化に関連する部分を肯定的に捉えてアイデンティティを形成しつつあることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定よりもデータ収集が遅れたため、分析も遅れている。しかし、本研究課題の目的の一つである外国において構築された社会心理学的理論を日本社会に適用可能かという点については、一部ではあるが、分析を行い結論を得た。これは、2015年9月の日本心理学会第79回大会において発表し、一定の成果を得た。今後、それを論文にまとめること、さらに別の理論についても分析する目途を得た。 以上から「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
民族的アイデンティティの3段階モデルに基づいた分析結果を論文として発表することに加えて、異文化適応の方略という理論の観点から、現時点で得ているデータを用いて分析を行う予定でいる。
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Causes of Carryover |
調査が当初の予定よりも長期になり、調査データの文字起こしと翻訳などの時期が遅れたこと、また研究代表者の本務校の業務が予想以上に多忙であり研究時間を十分に確保できなかったことのために、経費をすべて使用するだけの研究の進捗ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初は、平成27年度に予定していた調査データの文字起こし、翻訳などにかかる費用の支払いを、今年度に行う予定である。
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Research Products
(1 results)