2013 Fiscal Year Research-status Report
映像型ドライブレコーダーを搭載することで生じる心理的効果に関する基礎研究
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25590163
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
宮崎 由樹 中京大学, 心理学部, 助教 (70600873)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 交通心理学 / ドライブレコーダー / 見られること / 観衆効果 / 視覚探索 / 視覚的注意 / ヒューマンエラー / 見落とし |
Research Abstract |
近年,交通事業所を筆頭に交通事故発生前後の動画像を記録する映像型ドライブレコーダーの導入が進んでいる。元々ドライブレコーダーは,交通事故が生じた際の事後処理を円滑にするために開発された経緯があるが,ここ最近の調査では,ドライブレコーダーを搭載することで,(搭載前と比較して) 事故率が減少することが報告されている。このことは,“ビデオカメラで監視されている”という意識が安全運転に対する判断基準の変容や認知機能・運動機能の向上に寄与する可能性を示す。しかし,この効果のメカニズムについてはよくわかっていない。本研究は,ビデオ機器で映像記録されることがわれわれの認知処理過程にどのように影響を及ぼすか明らかにすることを目的とした。 平成25年度は,視覚探索課題を用いて検討した。視覚探索課題とは“ウォーリーを探せ”のようなもので,ある環境において特定のターゲットが存在するかどうかを判断する課題である。例えば,自動車を運転中に歩行者が目の前にいるかどうかを判断するのも視覚探索のひとつである。この実験で参加者は,あるブロックではビデオカメラで監視されながら視覚探索を行い,別のブロックではビデオカメラで監視されずに視覚探索をおこなった。実験の結果,ビデオカメラで監視されることによって,視覚探索の正確さ (正答率) が向上すること,探索の速度 (反応時間) が遅くなることが示された。この結果は,ビデオカメラで監視されることで,われわれが探索の正確さを優先させるようになる (速さと正確さのトレードオフが生起する) 可能性を示す。さらに,探索の効率の結果に基づいて,監視によって空間的注意が焦点化する可能性が示された。また,信号検出理論に基づく解析結果から,ビデオカメラによる監視は探索中の判断基準にも影響する (反保守的になる: ターゲットが存在すると判断しやすい傾向になる) ことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の実施予定であった研究については,予想以上にスムーズに実験が進行したことによって,審査段階の平成24年度中に一部の研究が終了し,その一部の研究については平成24年度中に国際誌に受理されることとなった。なお,【研究実績の概要】にて紹介した研究は,ビデオカメラによる監視の有無を被験者内要因として操作していたが,その後の追試において,被験者間要因として操作した実験でも同様の結果を観測している。つまり,研究結果の再現性についても検討を行った。 平成25年度の9月からは,より特殊な視覚探索場面でもこの監視の効果を活用できるか検討中である。視覚探索にて,出現頻度が低いターゲットは非常に見落とされやすいと言われる。例えば,空港保安スタッフの手荷物検査や医師のスクリーニング検査では,前者であれば爆弾や銃などの危険物を見落とすやすく,後者であれば悪性腫瘍を見落としやすくなる可能性が示唆されている。この効果は prevalence effect と呼ばれ,解決の方法がいまだ見つかっていない。Prevalence effect をビデオカメラによる監視によって,抑制できるかどうか現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,研究計画書においては,自意識の個人差の高さ・低さとビデオカメラで監視されることの効果の強さ間の関係の検討することを目的としていた。しかし,その予定を変更し,平成26年度の課題で浮かびあがった3つの可能性のうち2つについて検討するために,別の実験を遂行する。 平成26年度の研究結果から,ビデオカメラで監視されることは,a) 速さと正確さのトレードオフ (正確さの優先),b) 空間的注意の焦点化,c) 判断基準の反保守化,の3つの何れかあるいは複数が同時に生起する可能性が示された。 まず, a) について検討するために,眼球運動計測システムを用いて,視覚探索中のサッカード回数,サッカード振幅,固視時間などの眼球運動指標を計測する。もし,ビデオカメラで監視されることによって,速さと正確さのトレードオフ (正確さの優先) が生じるのであれば,サッカード数は多くなり (同じ所を何度も探索したり),サッカード振幅は小さくなり (小刻みに探索したり),固視時間は長くなる (ひとつひとつの刺激をしっかりと見るようになる) と考えられる。 次に,b) について検討するために,フランカー課題を用いる。フランカー課題とは,周辺の妨害刺激を無視しながら,中央のターゲット刺激を弁別する課題である。たとえば,被験者は”NNZNN”と呈示された文字列を見て,”Z”と素速くかつ正確に答える。この課題では,ターゲット刺激と妨害刺激の一致性を操作し,一致試行 (例えば,NNNNN) と不一致試行 (ZZNZZ) がある。もし,ビデオカメラで監視されることによって,空間的注意が焦点化するのであれば,不一致試行における反応時間や反応の正確さが,ビデオで監視されていないときより,ビデオで監視されているときの方が向上すると考えられる。 なお,上記の研究の推進方策は,進捗によって変更・研究を追加する場合もある。
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Research Products
(1 results)