2014 Fiscal Year Research-status Report
「気になる」幼児における運動調整と情動調整との;連関性の発達的変化に関する研究
Project/Area Number |
25590169
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本郷 一夫 東北大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30173652)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 気になる子 / 運動発達 / 運動調整 / 情動調整 / 有能感 / サッカー |
Outline of Annual Research Achievements |
1.問題と目的: 一般に、「気になる」子どもは、対人関係や集団適応の問題に加え、運動調整の難しさや運動に対する苦手意識をもちやすいことが指摘されている。そのような観点から、本研究では、本研究では支援プログラムを作成するために、運動得点と自己評価との関連を明らかにすることを目的とした。 2.方法: (1) 対象児:保育所の5歳児クラスの子ども20名。(2) 期間:サッカー巡回指導は、年間5回実施された(5月・10月・2月のデータを分析)(3) 課題:4つの運動課題と2つの自己評価課題から構成された。①マーカー取り、②ビーズ通し(5月・7月)、③タッチゲーム(10月・12月・2月)、④シュート練習、⑤自己評価、⑥有能感の評定。 3.結果と考察:(1) 運動得点:運動能力の測定においては、マーカー取りでは5月から10月にかけて成績が上昇する傾向が見られた。(2) 自己評価得点:運動の自己評価においては、シュート練習の自己評価が5月から10月にかけて上昇した。(3) 有能感の評定では、運動と勉強に関する有能感において有意差は見られなかったが、次第に順に上昇していた。(4) 運動得点と自己評価との相関を求めた結果、5月においてはマーカー取りの運動得点と自己評価、およびビーズ通しの運動得点と自己評価との間に有意な相関が見られたが、10月になると、タッチゲームにおいては相関が見られなかった。また、翌年2月になるとマーカー取りとタッチゲームの運動得点と自己評価との間に相関は見られなかった。以上の結果から、時期とともに運動得点と自己評価との関係が変化していく可能性が示唆された。その原因として、5月においては他児との比較を自己評価の判断基準とし、翌年2月においては事前の自己の目標と実際の運動得点との比較を判断基準とするようになる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は、サッカーの巡回相談時に、子どもの運動発達課題の成績、運動に対する自己評価、有能感のデータを縦断的に5回測定できた。このうち、運動に対する自己評価と有能感の測定については、KEEPAD JAPAN のクリッカー用アプリケーション(Turning Point 2008)を用いて、各々の参加児にクリッカーの該当ボタン(1~4)を操作させて,一斉に評定をさせた。子どもへの教示の方法の改善もしたため、子どもが楽しんで参加できる工夫ができたとともに、これまでよりも短時間で多くのデータを収集できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は最終年度となるために、これまで蓄積してきた研究方法をさらに改善するとともに、横断的方法と縦断的方法を組み合わせた研究を行う。 具体的には、1.縦断的方法: 保育所の5歳児クラスを対象として、運動発達、運動に対する自己評価、日常の有能感の変化を縦断的に追跡するとともに、運動発達と自己評価・有能感及び情動調整との関係の変化の要因を探る。 2.横断的方法: 複数の保育所・幼稚園の5歳児クラスを対象に、比較的多くのデータを収集し、「気になる」子どもにおける運動発達及び運動発達と自己評価・有能感の連関、その他の子どものにおける運動発達及び運動発達と自己評価・有能感の連関を企画検討することにより、「気になる」子どもの特徴を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、縦断データの結果の分析に基づき確定した測度を用いて、比較的多くの子どものデータの収集をする予定であった。しかし、年度末の時期にかかり、行事などのスケジュールのため保育所などからの協力が十分には得られなかったため、横断データの収集を27年度にまとめて行うことにした。そのために予定していた物品の購入と謝金の支出が予定より少なくなり、一部繰り越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、これまでの縦断研究に加えて、横断研究を実施し、比較的大量のデータを収集する。そのため、サッカーのボールなどの購入、協力園への謝金、データ分析の謝金の支出を予定している。また、第17回ヨーロッパ発達心理学会において、研究成果の発表を予定している。
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