2015 Fiscal Year Annual Research Report
子ども視点から見るデジタル絵本の可能性と陥穽:縦断調査を中核とした萌芽的研究
Project/Area Number |
25590172
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 利彦 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90242106)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | デジタル絵本 / 読み聞かせ / スマートフォン / タブレット端末 / アプリ / エフェクト / 幼児 / 保育園 |
Outline of Annual Research Achievements |
小学校以上の学校教育におけるICT化(例えばデジタル教科書や電子黒板などの導入)が急速に進む中、その余波は、確実に就学前の乳幼児期にも及びつつある。乳幼児期の生活状況に広く認めることのできる絵本についても、既に多くのタブレット端末あるいはスマートフォン対応のアプリ型絵本が開発・配信され、現実的に、相当数の養育者が、発達早期段階から、子どもに対してそれを使わせるようになってきていると言われている。アプリ型絵本の中には、ただ単に紙絵本の内容(絵やストーリー文など)をデジタルに置き換えるに留まらず、そのマルチメディア性を最大限に活かして、従来の紙絵本にはない音や動きなど、多様なエフェクトを付加したものがきわめて多く存在する。一見、それは子どもの注意を強く引きつけ、魅力的なものと見えることが多いが、その子どもの認知・社会的側面の発達に対する影響は、未だほとんど実証的検討に付されてはいない。こうした現状を受けて、本研究は、昨年度、家庭におけるアプリ型絵本の使用について観察調査を行ったが、今年度は、場所を変え、保育園の集団状況におけるその使用に関して基本的知見を得ることとした。具体的には、首都圏にある保育園2園をフィールドとして、観察者によるiPadを用いてのアプリ型絵本の読み聞かせ、同内容の紙絵本による読み聞かせ、また子どもにiPadを委ねてのその自発的使用などに関して、自由度の高い観察およびその録画、さらにはそれらの使用についての幼児の感想等に関して面接を行った。結果として、アプリ型絵本に対する関心はきわめて高いものがあったが、その実態は、大半が付加された音や動きなどに対するもので、反面、ストーリーに対する注意は顕著に薄らぐ傾向にあることが認められた。ただ、幼児のアプリ絵本に対する反応には広範な個人差が認められ、子どもの中には、アプリ絵本を「絵本」として認識しないような者もあった。
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[Book] 思春期学2015
Author(s)
遠藤利彦(章担当:監修・長谷川寿一)
Total Pages
355(内・執筆分39)
Publisher
東京大学出版会
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