2013 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スペクトラム障害にたいする感情教育セミナーの研究
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25590176
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
須田 治 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (50132098)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 感情的支援 / カウンセリング / 不安軽減 / アレキシサイミア傾向 |
Research Abstract |
この研究では,自閉症スペクトラム障害(ASDと略す)を対象として,感情教育による支援可能性を探るものとした。すなわち二つの接近法を考えてきた。 (1)セミナー的な形式で行うことの可能性をさぐり,ASDの当事者とその周囲にいる職場の人びとへのセミナー,あるいは家族(あるいは当事者)へのセミナーを行い,グループダイナミックス的にコンサルテーションとしての問題の把握と,対応のあり方を理解してもらい,さらには心理学的援助についての模擬実習をやろうとした。 また(2)見出された当事者にたいして,ケースごとに緊張と警戒心を緩和するための直接的な援助を行なって,感情からの心理学的援助の方法を試み,効果を検討してみようとしてきた。 1年間,さまざまな形式でセミナーを企画し応募を求めたが,現実の社会は経済的な不況などの背景もあって,応募の需要が低いことがわかった。具体的には,都庁での部局の代表者たちへの提案会(2013年7月30日),労務事務所でのASDのケースへの対応をインタビューし,さらには特例子会社25社へのセミナー型の支援を呼びかけたが,希望が少く,むしろケースベースの支援が個別支援として求められていることが解った。 そこで,方向を変えて2013年度後期からは,感情にかかわるインタビュー方法を開発してきた。具体的にはインタビューから,ケース固有の人間関係の特徴を抽出する方法を生み出した。すなわち健常者を対象として院生の協力で実現した。 以上を踏まえて,2014年度には,ASD当事者に個別で,感情についての周辺人物に関するインタビューをなし,簡易カウンセリングに結びつけるという方法を探索することにしたい。さらに希望に応じてリラクゼーションを提供することにする。以上を主軸して個別支援を検討することにしたい。セミナーという形式は,そうした個別支援に繋ぐためのグループ支援にとどめることにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初形式として職場などでのセミナーを行なう形態をとることにしたが,社会におけるこの問題への認識はまだじゅうぶん立ち上がっているとは言えなかった。そこで,感情支援を個別形態で(家族向けセミナーなどから)進めるという形態へと移すことが必要になってきた。 しかしそうだからと言って,けして研究が停止していたというわけではなかった。この間,その感情カウンセリングの成立に必要な,当事者と周辺人物の関係をとらえるための発話内容分析を開発していた。そのためには時間がかかった。その結果,柔らかな助言を含んだ簡易カウンセリングへと展開するための一つの方法を構成することができたのである。そこで経費の面では,2013年度で使用をしなかった補助金の多くは,健常者へのインタビュー方法には用いなかった。それを踏まえて2013年度補助金の多くは,2014年度のデータ収集のためににもちいることにしたい。すなわち,新たな支援方法の検証をしてみることに向かいたいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年は,アスペルガー障害を中心としたASDのケースを中心として,感情支援の可能性を探ることにしたい。すなわち親の会のセミナーなどを介して,対象者を募り,個別セッションとして支援実験を行なうことにしたい。しかしそれは仮説検証実験ではなく,生活の現実をケースごとにとらえ,記述し,その関係性の問題を把握して,簡単なカウンセリングと必要に応じてリラクゼーション(漸進的筋弛緩法)を行なうものとしていくことになる。先に述べたように,親の会では個別の支援をもっとも求めていることが分かってきたからである。 具体的には(a)6~7人程度のセミナーとしての人数での,グループ支援で基本的な個別支援に繋ぐピア・カウンセリングの試みを行なうことと,(b)個別の親子支援を行うことこと,とくに感情にかかわる個別インタビューから,ケース固有の人間関係の特徴を抽出し,それを踏まえて,簡易カウンセリングをおこなうことにしたい。なお必要に応じてリラクゼーションを提供するという内容を主軸とすることにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
特例子会社などでの職場におけるセミナーを途中で断念し,健常者を対象者として感情の内容分析を行なったたため経費を次年度のデータ収集や解析に回すことにした。 これはけして感情支援を取りやめたのではなく,むしろ個別ケースへのカウンセリング的な接近法に替えたためである。なお2013年度はけして研究が停止しているのではなく,健常者をもちいて,そのカウンセリングに必要な,当事者と周辺人物の関係をとらえるための発話内容分析を開発するために時間をかけた。そのための経費は本研究費とは趣旨が違うと判断し,使用しなかった。しかしその結果,柔らかな助言を含んだ簡易カウンセリングへと展開するための方法を構成することに成功したのである。 経費の面で2013年度に使わなかった金額は,2014年度のデータ収集のためにに残った額をもちいることにしたい。アルバイトも必要になるし,参加してくれる当事者には,ケースごとに実験支援を行なうために個別支援のための経費がやや大きく必要になる。
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