2013 Fiscal Year Research-status Report
認知症の施設介護におけるボトムアップ型実践システムの開発に関する研究
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25590186
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 眞一 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (40196241)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 介護職員養成・研修 / 組織コミットメント / キャリアコミットメント / 介護負担感 / 看取りケア効力感 / ボトムアップ型再学習 |
Research Abstract |
本研究課題を遂行するに当たって,以下の研究を実施した。 資料・文献研究:介護職員養成・研修の実体を整理し,課題の発見を行った。そのために,介護保険制度成立前からの研修制度,介護福祉士養成校における教育内容等をはじめとする介護士養成のための教育内容についての資料の収集と分析を行った。 介護現場における研修等のニーズ調査:社会福祉法人大阪府社会福祉事業団の協力の下に,介護現場における研修知識の活用,職場におけるコミュニケーション,職務動機の維持・向上のための取り組み,認知症ケアの実態と改善等に関する質問紙調査を行った。その結果,職場における介護実践に研修成果を結びついていない現状が明らかとなり,介護現場においてボトムアップ型の再学習システムの開発の必要性が明らかとなった。この成果を大阪府社会福祉事業団への報告書にまとめた。 介護福祉士への郵送調査:公益社団法人日本介護福祉士会の協力の下に,全国の高齢者施設に勤務する日本介護福祉士会会員を対象に質問紙調査を行った,調査対象者は介護福祉士2,000 名であった(回収数1485,回収率74.3%)。主な調査内容は,介護職員の組織およびキャリアへのコミットメント,介護負担感,看取りケア効力感,認知症ケアの方法であった。介護職員の職務動機を高めるための手法の開発をこれらの点から検討し,日本介護福祉士会への報告書にまとめた。 これらの成果に関して,国際老年学・老年医学会議(IAGG),日本応用老年学会にて研究発表を行い,日本発達心理学会に論文を投稿し採択された。また,認知症の人と家族の会において家族介護者のニーズについて議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献研究,介護福祉現場における研修等のニーズ調査,介護福祉士への質問紙調査は予定通りに実施できた。また,調査の成果の報告も現時点では一部に限られているが,国内外の学会発表および論文として公表できた。 介護専門家・管理者面接調査および介護職員面接調査のプロトコルは現時点では作成できていないが,予備調査は行ったので,今後の課題としたい。 公益社団法人認知症の人と家族の会の全国研修集会に参加し,専門的介護の課題等について議論できたことは,予定以上の成果と思われる。また,次年度以降の課題発見を目的に,大阪府下の2施設にて事例検討を始めていることも予定以上の研究の発展と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
大阪府社会福祉事業団の協力の下,介護事業の専門家および管理者の立場からの教育・研修の目標,現状,問題点を検討し,教育的支援実施に関わる課題を明らかにする。この目的は有効度の高い認知症ケアを行っている職員の有する潜在的コンピテンスを明確化することにある。そのために,管理的な介護専門職者および施設長等の管理者に対する聞き取り調査を行う。 さらに,有効な認知症ケアを実践している介護福祉士等の介護職員に対して,質問紙調査では明らかにできない職務観,職務実体,職務満足度,教育的支援へのニーズなどの面接調査を実施し,職場内研修として必要な要因を検討する。本調査の目的は,有効度の高い認知症ケアを実践している職員のコンピテンスを明らかにし,その要因を分類整理することにある。 以上の研究により,研修成果を介護現場の具体的なケアに活かすためのボトムアップ型研修システムの課題を明確にし,事例検討会を通じて実践を行っていく。特に,認知症ケアおよび看取りケアに必要なコンピテンスを明らかにし,介護職員に必要とされるコンピテンスを分類整理する。 今後は,本年度に行った調査成果を中心に,アメリカ老年学会(GSA),日本老年社会科学会および日本老年行動科学会等で研究発表を行い,併せて専門学術雑誌に論文を投稿する予定である。
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