2013 Fiscal Year Research-status Report
自律神経系活動にみられるストレス回復性の指標化とレジリエンスとの関係
Project/Area Number |
25590188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩永 誠 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40203393)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レジリエンス / ストレス / 自我脅威事態 / 自律神経系指標 / 対処 / 適応性 / 回復性 |
Research Abstract |
レジリエンスは脆弱性に相対する概念として,ストレスからの回復に着目した概念として提唱された。私たちの生活においてストレスを感じないことはない。そのため,ストレスからいかに早く回復するかが,健康を維持する上でも重要な課題となっている。本研究はストレスからの回復過程に着目し,自律神経系反応の回復パターンの分類とそれを規定する要因を明らかにすることを目的とした。平成25年度は,調査研究と実験研究の2つを行った。 (1)レジリエンスが対処方略採用と精神的健康に及ぼす調査研究:大学生163名を対象に,二次元レジリエンス尺度(資質的要因・獲得的要因),大学生用適応感尺度,日本版精神健康調査,TAC-24を実施した。対処方略については,制御可能性高・低のシナリオを呈示し,それに対する対処採用から,対処の柔軟性を算出した。その結果,レジリエンスの資質・獲得的要因はともに適応感を高め,特に資質的要因は精神的健康を高めることがわかった。レジリエンスは対処の柔軟性を高めることから,適応に結びつくと考えられる。また,レジリエンスの資質的要因が低くても,獲得的要因が高く対処が柔軟である場合には,適応感が高くなることから,対処スキルの獲得が適応に促進的に機能することが示された。 (2)レジリエンスがストレスからの自律神経系指標の回復に及ぼす実験研究:スピーチ場面を設定し,レジリエンスと認知的対処(気そらし・再評価)がスピーチ後のストレス回復に及ぼす影響を検討した。その結果,主観的な感情体験である活動的快・非活動的快は,回復期においてレジリエンスによる違いは認められなかった。血圧やSCLにおいて,レジリエンスによる回復効果は認められなかったが,再評価方略が気そらし方略よりも回復性が高いことが示された。スピーチという自我脅威状況において,レジリエンスは自律神経系指標の回復性を促進することが確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では,平成25年度に①レジリエンスが精神的健康に及ぼす影響を検討する調査研究と,②ストレス事態の違いにおける自律神経系活動の回復とレジリエンスの関係を検討する実験研究を行うことを予定していた。①の調査研究は実施できたが,②の実験研究の代わりに,平成26年度に計画をしていた③自我脅威自体における自律神経系活動の回復とレジリエンスの関係についての実験研究を行った。自我脅威事態としてスピーチ課題を行い,回復期に行う対処方略との関連を検討した。平成26年度に,当初計画していた②のストレス事態の違い(能動的対処事態と受動的対処事態)とレジリエンスとの関係についての検討を行う。 平成25年度は,ベース時を基準とした回復率を求めて,レジリエンスが自律神経系指標の回復に及ぼす検討を行った。回復率は,レジリエンスの指標として用いられているものの,回復のパターンを検討できているわけではない。そこで平成26年度は,これまでのデータと新たに行う実験データの双方を用いて,時系列変化パターンを対象として,回復過程の分析を行うこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,当初平成25年度に実施する予定であった「自律神経系活動の回復パターンの分類とレジリエンスとの関連に関する検討-能動的対処事態と受動的対処事態の比較-」を行い,総括として,「自律神経系活動の回復パターンとレジリエンス及び個人要因との関連に関する検討」を行う。 (1)自律神経系活動の回復パターンの分類とレジリエンスとの関連に関する検討-能動的対処事態と受動的対処事態の比較-:能動的対処と受動的対処という実験事態の違いを課題により設定し,レジリエンスと自律神経系活動の回復性との関連を検討する。能動的対処事態ではタイプIの反応が認められ,血圧・心拍数の増加と抹消血流量の減少が認められるが,受動的対処事態ではタイプIIの反応が認められ,血圧の増加と心拍数・抹消血流量の減少が認められる。このように,ストレス状況により自律神経系反応の表出に違いが認められることから,ストレスからの回復パターンにも影響を及ぼすものと考えられる。そこで,ストレス状況の違いが自律神経系反応の回復性に及ぼす影響を検討することとする。能動的対処事態として認知課題を,受動的対処事態としてストレス映像の視聴を用いる。自律神経系指標としては,心拍数(HR)と心拍変動(HRV)の指標として高周波成分(HF)と低周波成分(LF)を抽出し,交感神経系(LF/HF)と副交感神経系(HF)に分けて検討する。また,血圧と抹消血流量も測定し,指標間の比較も行う。 (2)自律神経系活動の回復パターンとレジリエンス及び個人要因との関連に関する検討:平成25年と26年に実施した実験の自律神経系指標のデータを用いて,各指標の回復パターンをクラスター分析によりパターン分けを行い,レジリエンスおよび個人要因,実験条件との対応を検討する。また,指標間の関連性についての検討も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
雇用による謝金支払いの計算間違いがあり、4000円弱のあまりが生じた。 平成26年度に実施する実験における雇用で使用したいと考えている。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] 喪失とこころ2013
Author(s)
岩永誠
Organizer
第13回日本音楽療法学会学術大会
Place of Presentation
米子(米子コンベンションセンター)
Year and Date
20130906-20130907
Invited
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