2013 Fiscal Year Research-status Report
いじめ問題の介入に資する孤立者の環境認知の特徴と孤立無援感の研究
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25590198
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Shizuoka Eiwa Gakuin University |
Principal Investigator |
波多野 純 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 教授 (10311953)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | いじめ / 環境認知 / 孤立感 |
Research Abstract |
3年間の研究計画の初年度である平成25年度は,いじめ研究と距離知覚,空間認知研究の国内外の文献を収集し,レビューを行ない,仮説モデルの生成を目指して研究を実施した。データベースを中心に文献情報を検索したところ,いじめ研究は国内外で数多くの研究が行われており,相当量の知見が蓄積されているが,本研究が意図しているような被害者視点での研究は,理論的にも実証的にも有力な先行研究が行われていないようである。いじめが強い孤立感および孤立状態を生み出すことを示す研究成果はあるが,そうした孤立感が被害者の環境認知(特に学校環境の認知)に及ぼす影響を示唆する資料は,いじめ研究の文脈においては得られなかった。その一方で,いじめ現象を直接の対象とはしていない社会心理学的研究において,否定的な対人経験が及ぼす様々な影響に関する知見が蓄積されつつあることがわかった。特に,ストレス理論と脅威の知覚に関する研究を統合した資源知覚モデルは,いじめ被害者の環境認知の変容を検討していくうえで有力なモデルであるとの感触を得た。自己が保護され安全であると感じられない環境下において,人は自己に関する出来事を極端なものとして認知しやすい。また,いじめ被害者の手記や手紙を集めた文献資料によって,当事者が経験する主観的世界では,対人関係を中心に,環境が安定性を失うことも推測できた。現在,これらの知見をいじめ被害者の状況に適用したモデルの生成を含めたレビュー論文を執筆中である。レビュー論文では,学校環境を自己への脅威と認知せざるを得ないいじめ被害者は,その環境をきわめて孤立無援で危険なものと感じるため,いじめ介入に有効な資源が存在したとしても,利用可能なものとは認知されず,それが一層孤立を深めるという悪循環を生み出すことが論じられる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献情報の収集と読解が予定どおりに進み,レビュー論文を執筆するめどが立っていることから,順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては,孤立無援感を感じているいじめ被害者には周囲の環境がどのように認知されるのかを明確な仮説モデルとするために,対人関係において孤立を経験したことのある人々を対象に面接調査を行う予定である。この課題の推進のために,大学生を対象とした聞き取りを行うとともに,中学・高校教員を対象に,孤立した生徒に接した経験等を聞き,モデルの精緻化を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
文献研究のために発注した書籍が経費の請求期限までに到着しなかったため。 当該年度に納品されなかった書籍を翌年度にあらためて発注し,入手する予定である。
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