2014 Fiscal Year Research-status Report
いじめ問題の介入に資する孤立者の環境認知の特徴と孤立無援感の研究
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25590198
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Research Institution | Shizuoka Eiwa Gakuin University |
Principal Investigator |
波多野 純 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 教授 (10311953)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 孤立感 / 環境認知 / いじめ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,孤立者の環境世界認知に関する仮説モデルを作成することが目標であった。大学生の調査協力者を対象に予備的インタビューを行い,孤立を経験しやすい状況の探索を試みた。インタビューの結果,大学生の孤立経験をモデル化するための題材として,進路選択場面が適切であることが見出された。 そこで,大学生が自分の進路を考える際に,周囲の環境における誰の,どのような経験を参照しているのかを調査するとともに,そのような手がかりを環境中に欠いている場合,どのような孤立感を感じるのかを測定する尺度を作成し,大学生が感じる孤立感について分析を行なった。 大学生41名を対象に,誰の,どのような経験や知識を参照してきたかを自由記述によりたずねた。その結果,両親や学校などの情報源だけでなく,同年代の友人やアルバイト先の社員などの経験を手がかりとしていた。参照する内容は,就職活動の進め方や職業知識などのきわめて一般的な事柄であった。このことから,身近に大学の就職課のような専門の就職支援組織が存在するにもかかわらず,それを環境中の資源として認識していない可能性が示唆された。 次に大学生70名を対象に孤立感を測定する尺度を実施した結果,進路選択における孤立感には道具的なものと情緒的なものの区別が示された。身近に就職に関する豊富な知識・経験の持ち主がいない場合に道具的孤立感が感じられ,自分を励ましてくれたり,就職について何でも話せる相手がいなかったりした場合に情緒的孤立感が感じられることが示された。これらの孤立感は,一般的な孤独感とは異質なものである可能性も示唆された。 これらの研究から,孤立者の環境世界の認知について2点が指摘できる。(1)身近に孤立を解決できるような資源が存在したとしても,それが利用されるとは限らないこと。(2)孤立感には2種類あり,それを低減する資源も2種類あると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の計画では孤立経験者に対するインタビューを実施し,孤立した状況が周囲の環境をどのように感じさせるかについて仮説モデルを生成することであった。インタビュー協力者を得ることが難航しているため,調査は開始できたもののまだ十分な資料が集まっていない。対策として,すでにインタビューを行なった協力者に,新たな協力者の発掘を依頼しているところである。 以上のように,若干遅れがあるものの,他の計画実施の準備を並行するなどの対策をとっているため,計画全体への影響は少ないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に,インタビュー協力者を集めることに苦労したため,現在引き続き協力者を募り,インタビュー調査を継続中である。この調査に時間を要したため,インタビューと並行する形で平成27年度計画の準備を一部前倒しにし,実験に必要な尺度開発を行なっている。 平成27年度の計画では,孤立者が空間の広さの知覚と,環境の抽象性の知覚において,非孤立者との間にいかなる相違を示すかを実験的に検討する。
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Causes of Carryover |
今年度に行う予定であったインタビュー調査の一部が,協力者を探すことに難航したことと,実験で使用する予定のソフトウェアが,先に実験指標の開発に着手した関係でまだ使用する段階ではなく,購入が次年度になったため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インタビュー協力者への謝金および研究補助への謝金は計画通り使用する予定である。また,実験用ソフトウェアも予定通り購入する。ただし,実験刺激の提示にミリ秒単位の統制が不要と判断した場合は,統計分析用のソフトウェアを購入する予定である。
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