2013 Fiscal Year Research-status Report
鳥類・齧歯類を対象とした侵襲性の少ない脳活動の計測技術の確立
Project/Area Number |
25590202
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡ノ谷 一夫 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30211121)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳波 / 事象関連電位 / 聴性誘発電位 / オドボール課題 / トリ / マウス |
Research Abstract |
本研究は、ヒトの事象関連電位と比較しうるような認知的指標となる集合電位を動物において非侵襲的に得ることを目的とする。これが可能になれば、ヒトと動物の認知過程を行動だけではなく脳波の挙動から比較できるようになり、比較認知科学の進展に有益である。 初年度は、ヒトにおけるP300のような、新奇性検出(オドボール課題)に対応する電位を動物から得ることができるかどうかをマウスとトリ(ジュウシマツ)で検討した。マウスにおいてはクリックに対する聴性誘発電位を録り、つぎにオドボール課題に進むことを計画したが、聴性誘発電位の記録が難しかったため、現在のところ目標に達していない。しかし、超音波計測の技術が改善し、聴性誘発電位の記録には成功したため、遅れは取り戻せると期待できる。現在用いている方法は、頭皮に電極針を刺すだけなので侵襲性は低い。 トリにおいては、当研究室において単一神経細胞記録の技術が確立されていたため、まずはこの技術によりオドボール課題に応答する神経活動が得られるかどうかを検討した。トリの歌を分析して短い要素を選び、90%提示される音と10%しか提示されない音への応答の違いを検討した。結果、聴覚応答を示した神経細胞のうち25%程度がオドボールにも応答することがわかった。複数の単一細胞の集合電位と対応するとみられるフィールド電位も同時に記録してあるため、このデータから事象関連電位に対応する成分を探す作業を進めている。この方法は侵襲性が高いため、次年度以降、侵襲性の低い方法に移行する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、マウスにおける聴性誘発電位の記録に難航した。誘発電位は取れるのだが、それにより聴覚測定が可能なほどの精度が出なかった。その原因として、用いた電極やフィルター設定が適切ではなかったことが考えられる。また、音響計測に用いた装置が正確に作動していなかったことも原因である。 このため、この分野における第一人者である台湾大学生命科学院教授である嚴宏洋氏の指導を得て、これらの点を改善した。また、校正済みの超音波計測用の装置を導入して刺激・記録システムを正しく測音した。以上の努力により、聴性誘発電位の記録が可能になったので、おおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスにおいては、聴性誘発電位の記録法を確立した後、マウスの自然発声を刺激としてオドボール課題を試みる。マウスのオスの求愛の歌の中に、マウス幼体の隔離声を埋め込み、その声に対してオドボール様応答ができるかどうかを検討する。また、ピッチの異なる音についてのオドボール応答を記録し、自然音声への応答と比較する。 トリにおいては、フィールド電位に対応するような電位を単一細胞記録の総和から得られるかどうか検討し、また、それらの電位をより簡便で非侵襲的な方法で得る方法を確立する。
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Research Products
(2 results)