2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25590203
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
高橋 晃 静岡大学, 情報学研究科, 准教授 (40313928)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 記憶 / 再認判断 / 新項目 |
Research Abstract |
本研究は、記憶中に存在しなかったものを正しく存在しなかったと判断する“正しい新項目判断(Correct Rejection)”のプロセスについて、基礎的研究により検討した。 従来の再認記憶研究は“実験時に一度見ている項目(旧項目)”に注目してきた。一方、再認判断の“裏側”には“実際には見ていない項目(新項目)”を正しく「見ていない」と判断するロジックが(旧項目判断と同程度の比重で)存在しているが、この新項目判断についての詳細は明らかではなかった。そこで本研究では、この新項目判断プロセスに注目することで、再認判断の理論の再構築を行うことを目的とした。 この目的のため、探索空間の広さ(記銘項目数:3群、36,72,108項目)を変化させ、新項目判断の反応時間の変化を観察する再認判断実験を行った。その結果、(1)3群すべてにおいて、旧項目判断よりも新項目判断のほうが判断までの反応時間が長い (2)探索空間が広がるほどその差が縮まること、の2点が明らかになった。このことは、新項目判断プロセス自体は旧項目判断と完全に独立したものではなく、一部は表裏一体の関係にあること、さらに探索空間の大小に応じて再認判断プロセスが動的に変化している可能性があることを示唆した。すなわち、探索空間が小さい場合には、再認判断は悉皆検索的なプロセスが多くを占める。その結果、全ての項目を検索しなければ結論が出せない新項目判断の反応時間が、途中打ち切りを可能とする旧項目判断よりも長くなる。しかし、探索空間が広くなるにつれ、悉皆検索プロセスに限界が生じてくるため、その代わりに熟知度判断的な「項目単独で評価する」プロセスが支配的になり、新旧項目の反応時間差が小さくなるものと考えられた。 この「状況に応じた記憶検索プロセスの動的変化」の証拠は、従来の記憶研究では仮定されていないものであり、新たな知見と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度において、のべ100名に対する実験を行ない、一応の実験結果を出した。この点においては問題ないが、今後、結果を明確化させるためのさらなる補強実験を行う必要があり、そのため、成果物の論文投稿についてはやや遅れている。 また、新項目判断固有の属性について、今回の実験からは明確な特性が見出せていない。新旧判断は表裏一体の部分があることは事実だが、確信度評定との関連(高橋、198,2008)では明らかに特性の相違が認められる部分もあるため、新項目判断プロセスに固有の特性を見出すことを目的とした本研究の主たる目的を達成したとはいえない。これについては、今後実験条件を再検討する必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
新項目判断プロセスの固有の属性を見出すため、別なパラメータを利用しての実験を検討する必要があると考えられる。なお、当初想定していた「再認判断時の新旧バランス比率を変化させた実験」についても試験的に行ったが、参加者の内省報告から、解答系列がいつ終わるのかについてのヒントがなく、そのため全体のバランスを考えて回答することができないため、結果的に目の前に提示された項目のみの情報で判断していたという結果が得られたため、この手続きは予備実験の段階で打ち切っている。 今後は(0)現段階で得られている結果の補強 を中心に、(1)記銘時の系列位置による再認成績と反応時間の相違の解析、(2)確信度評定との対応関係の解析 を中心に研究を遂行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画していたノートPCによる実験装置のうち1台が既存の物品の流用で対応可能であったことと、想定していた旅費分が超過していたため、その差分が相殺されて現状の所要金額となった。 学会参加費、学会年会費、学会発表の旅費、ならびに実験参加者(150名程度を予定)謝礼用の文房具類での利用を計画している。
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