2014 Fiscal Year Research-status Report
飼育チンパンジーにおける慢性的ストレスとなる要因の因果的解明
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25590205
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺本 研 京都大学, 野生動物研究センター, 研究員 (50624061)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | チンパンジー / コルチゾル / ストレス / 生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
コルチゾル濃度測定の基礎情報となる体毛の成長速度を求めるために、本年度雄2例、雌3例の測定を追加した。雌雄各5例合計10例の測定の結果、1ヶ月の成長速度は雄で1.3cm、雌で1.0cmであり、雌雄に有意な差が見られた。採取した測定用サンプルには6ヶ月程度のコルチゾルが蓄積されている換算となり、本年度から体毛の採取を年2回に変更した。2014年9月、10月に59例の体毛の採取を行い、2015年3月、4月で56例の体毛の採取を行っている。2014年3月採取分までのコルチゾル濃度測定を終了した。測定したコルチゾル濃度の平均値は、2014年6月で16.1pg/mg、9月で23.2pg/mg、12月で30.0pg/mg、2015年3月で19.8pg/mgであった。同居時間が増加する夏季の状況を反映する9月、12月でコルチゾル濃度が上昇したことは、社会性の増加、気温の上昇が影響を与えると考えられる。6月からコルチゾル濃度の急激な上昇がみられた雄では、同居している雄の力が上昇してきた時期と一致しており、社会性の変化が大きな要因となると考えられる。逆に換気回数が少なく、利用空間が制限される冬季の状況を反映する3月のコルチゾル濃度が減少していることから、寒さ、アンモニア濃度の上昇、利用空間の制限は影響が少ないと考えられる。コルチゾル濃度に年齢との相関、大きなケガの影響は見られなかったが、雌に対して雄の方が有意に高い値を示した。コルチゾル濃度測定体制の整備として、本年度は抽出したホルモンの濃度測定を外部機関に委託する体制を整備し、先行研究の測定値と高い相関が得られた。これにより、熊本サンクチュアリでも体毛中コルチゾル濃度の測定が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
体毛中コルチゾルの抽出までを熊本サンクチュアリで実施し、濃度測定を外部機関に委託することで、測定の体制が整った。 熊本サンクチュアリで飼育しているチンパンジーについて、予定していた年2回の体毛採取は順調に進んでおり、やや遅れてはいるが2014年3月分までのコルチゾル濃度測定を終了した。 ストレッサーとなると考えられる攻撃行動、異常行動の観察、飼育環境の変化などのデータの蓄積も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
熊本サンクチュアリで飼育しているチンパンジーに関しては、年2回の測定を継続して行う。 2014年9月、2015年3月採取分のコルチゾル濃度測定を進め、すでに採取測定分との比較を行うことにより、ストレッサーとなると考えられる社会関係などとの関連性を検討していく。 また、スタッフ、飼育方法、飼育環境が大きく異なる他施設で飼育されているチンパンジーのホルモン測定、行動調査を行うことにより、ホルモン濃度に影響を及ぼす要因の調査を行う。
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Research Products
(2 results)