2015 Fiscal Year Annual Research Report
飼育チンパンジーにおける慢性的ストレスとなる要因の因果的解明
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25590205
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺本 研 京都大学, 野生動物研究センター, 特任研究員 (50624061)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | チンパンジー / コルチゾル / ストレス / 生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去2年間と同様の方法を用いて2015年3月、4月及び9月、10月の2回、熊本サンクチュアリで飼育しているチンパンジー55個体を対象に体毛を採取し、体毛中コルチゾル濃度の測定を行った。 これまでの3年間の測定結果より、体毛中コルチゾル濃度に雌雄差、季節変動が見られた。また雌雄群の群れの安定度が雄の体毛中コルチゾル濃度に影響を与えていることが示唆された。雌雄差に関しては、コルチゾル濃度の変動の大きさには雌雄差が見られないが、平均値では雄の方が高い値を示す傾向が見られた。このことより、雄の方が持続的にストレスを受けているかストレスに弱い可能性がある。季節変動に関しては、夏季の影響を反映する9月、10月に採取したサンプルの方が冬季の影響を反映する3月、4月のサンプルに対して高い値を示していた。これは暑さがよりストレス要因となる可能性を示している。雌雄群の群れの安定度の影響に関しては、群れ内のアルファ雄の力が強い群れではアルファ雄のコルチゾル濃度が他の個体と同じ程度であるのに対して、アルファ雄の地位が不安定な群れでは他の個体に対してアルファ雄のコルチゾル濃度が高い値を示していた。雄では社会性がストレスの大きな要因となっていることが示唆された。 本研究で体毛中コルチゾル濃度から慢性的ストレスの評価を行い、季節、社会性等がストレス要因となることが分かってきた。しかし、体毛中コルチゾル濃度は多くのストレス要因が複雑に絡みあった結果を反映しているため、今後は短期の影響を反映する尿中コルチゾル濃度等の他の測定項目を追加して読み解く必要がある。
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Research Products
(2 results)