2014 Fiscal Year Research-status Report
眼球組織の移動と変形の計測による高精度視線推定の研究
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25590208
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
早見 武人 岡山大学, 自然科学研究科, 講師 (60364113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 厚生 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (10200289)
松尾 太加志 北九州市立大学, 文学部, 教授 (70229425)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 眼球運動 / 視線計測 / 高速度撮影 |
Outline of Annual Research Achievements |
注視作業における眼球の高速な運動を捉えるための装置の作成を行った.本研究の最初の計画では眼球運動を撮影する光学系にはリレーレンズを採用する予定であったが,予算の都合により単一の望遠レンズに変更した.初年度に購入した高速度カメラと望遠レンズの組み合わせにより可視光照明下で眼球の撮影を行ったところ,映像が不鮮明であり,赤外線照明の使用が望ましいことがわかった.望遠レンズに赤外線フィルタを取り付け,赤外線照明により眼球を照射することにより,200fpsの高速度撮影でも眼球を鮮明に捉えることが可能であることを確認した.注視作業を裸眼で行うことのできる実験協力者は少なく,視力が矯正された状態で実験可能であることが望ましい.そこで眼鏡をかけたままの状態で高速度カメラを用いて眼球を撮影したところ,振動性のアーチファクトが見られ,心拍による眼鏡の振動と考えられた.眼鏡で反射した光源の映り込みを防ぐため,カメラと光源の光軸を一致させる落射照明により明瞳孔法での眼球撮影を試みた.この方法では視線方向をどの方向に移動させても角膜反射像が瞳孔からはみ出ることがなく,かつ眼鏡表面での反射や瞳孔への映り込みを防ぐことができた.しかしコントラストが低く高速度撮影では瞳孔が不鮮明となり,眼球運動を計測するために必要な精細さを持つ映像を取得できなかった.そこで照明を二色性鏡により刺激提示画面方向から照射し,眼鏡は鼻あてで持ち上げ,眼球を眼鏡の下から撮影したところ,高速度撮影下でも明瞭な暗瞳孔が得られるとともに角膜反射像の移動範囲を瞳孔の範囲内に収めることができ,良好な映像を取得することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では注視作業中の眼球運動を高速度カメラで撮影し,その特徴の概略を明らかにすることを目標としていた.研究代表者はこれまでに視線計測システムを作成した経験があり,本研究の目標のための装置作成はそれほど困難ではないものと予想していた.しかし,高速度カメラでの撮影は通常の動画撮影よりも格段に多くの光量を必要とする一方で,眼球に安全かつ実験に支障がないように照射できる光量には可視光線,赤外線ともに限度があり,その範囲の中で高精細な映像を得るためには眼球運動の撮影方式を改めて検討する必要があることが実験の過程で明らかになった.さらに心拍による人体の微細な振動が撮影結果に影響することも想定を超えるものであった.これらの課題の解決に時間を要したため進捗に遅延が生じたが,試行錯誤の末,解決方法を明らかにすることができた.今後の実験方法の手順や方針が明確に定まったため,今後の実験やデータ解析は比較的順調に進むことが期待される.今後は当初予定していた眼球運動の特徴の解析から進める予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により高速度カメラによって注視作業中の眼球運動を取得する方法が明らかになったので,今後は作業中の眼球運動を録画し映像の解析を行う.実験については倫理的に問題がないことを確認し,研究成果を心理学分野で発表できるようにする.映像の解析は既存のソフトウェアを用いたパターン認識により行い,注視作業特有の眼球運動の要素を抽出する.さらにモデル化により特徴的な運動を一般化し,視線計測精度の向上に役立てる.
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Causes of Carryover |
実験装置の構築にやや遅れが生じたため,実験協力者による実験と実験に関する研究発表は次年度に持ち越しとなった. 本研究では実験に際して実験協力者の協力が必要となる.実験協力者の協力が必要な実験を遂行する場合,近年では医学や心理学の分野では倫理委員会の審査を受けることが一般的となっているのに対し,工学分野では審査制度が整備されていないのが現状であり,本研究の内容は両者の境界に位置づけられる.適切な光量の赤外線照明下での動画の撮影は非侵襲的であるが,近年では社会全体において倫理的配慮への関心が高まっていることから,実験に際して審査を受けることが適切であると判断した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験協力者による実験と実験に関する研究発表に使用する予定であった経費は,次年度に持ち越したこれらの計画を実施するために使用する予定である.
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