2014 Fiscal Year Annual Research Report
財政再建を実現したオーストラリアの教育改革に関する研究
Project/Area Number |
25590218
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 博志 筑波大学, 人間系, 准教授 (80323228)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教育改革 / 教育予算の配分 / オーストラリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、財政再建を実現したオーストラリアを対象とし、財政再建が与えた影響を検証し、同国における教育改革の構造と原理を解明することを目的とする。2014年度の財政赤字は298億豪ドルの見込みである。G20諸国の中で最も赤字が少なく、健全である。いわゆる財政再建は達成されている。このような状況をふまえて、今年度は、ビクトリア州の研究を中心に進めた。すなわち、財政状況が健全であるにもかかわらず、教育財政支出(教育予算の規模)は拡大していない。ほぼ同水準で推移している。緊縮財政のため、予算を拡大することは許されていないのである。しかしながら、貧困地域の学力と富裕層の学力の差は拡大したままである。学力の格差を放置すれば、民主主義国家、資本主義国家の根幹が揺らいでしまう。この問題を解決するために、通常は、貧困地域への教育予算を単純に増加することを考えるだろう。ところが、ビクトリア州では、教育予算の増加は行わずに、予算の配分方式を変更することを提案した。集約的に言えば、予算の規模を変えずに配分を工夫したのである。ビクトリア州では、2005年以降、生徒のための包括予算(Student Resource Package)が導入された。生徒のための包括予算では、第一に、低学年に傾斜配分すること(低学年における教育を充実することによって後の学力が向上するためである。)、第二に、保護者の職業を指標として、特定の学校への傾斜配分を行うことをになっている(保護者の職業が学力に密接に関連しているためである。)。後者は公平予算と呼ばれている。このように、オーストラリアでは、いわゆる財政再建の効率と教育の公平を実現するために、予算の増加ではなく、予算の配分方法を工夫していることが明らかになった。このような予算の配分方法の工夫は日本では行われておらず、今後の日本にとって示唆的である。
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