2013 Fiscal Year Research-status Report
ナラティブ・ベースドな混合研究法による附属学校等の教育効果に関する調査研究
Project/Area Number |
25590226
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
佐長 健司 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (50253571)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 亜紀子 佐賀大学, 全学教育機構, 准教授 (20549141)
村山 詩帆 佐賀大学, 全学教育機構, 准教授 (30380786)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 附属学校 / 学校組織 / 教育力 / パーソナリティ / ナラティヴ / 定量分析 / 質的分析 |
Research Abstract |
本研究課題では、附属学校等の設置経緯と組織、教授・学習の方法、学力やパーソナリティ特性の関係性に注目し、附属学校等が果たす役割を総合的に理解し、適切に評価するための方法論、説明モデルの導出を目指している。そのため、インタビュー調査によって得られるナラティブ(語り)と定量データやドキュメント等を関連させて、対象を分析する混合研究法(ナラティヴ・ベースドな混合研究法)を採用し、研究課題に総合的にアプローチしたい。 附属学校等の児童・生徒、及び卒業生(大学生・社会人)のナラティヴによれば、次のことが明らかになった。(1)附属学校は児童・生徒の自主性を重視する独自な教育が行われ、それに対する児童・生徒による理解は一定以上にあり、評価も高い。(2)附属学校の児童・生徒、あるいは卒業生としてのアイデンティティは強固であり、地域社会からもそのような評価を得ている。(3)不登校等の問題、多様な進路保障等については、必ずしも適切な対応ができていないことがある。 キャリア形成が抱える課題を日本の社会的な文脈を考慮に入れて検討するため、『文部科学大臣所轄学校法人一覧』、『全国高等学校一覧』等の資料を収集し、系列校間のカリキュラムにいかなる連関が形成されているのかを実証的に分析した。その結果、概ね以下のような知見が得られた。(1)小学校以前の段階から大学・短大まで一貫して系列化されたインブリーディング機能は限定的にしか備わっていない。(2)学校間の系列化は、インブリーディングへの需要に支えられているばかりでなく、ローカル・トラックが成立するよう形成されている。(3)一部の系列校間で、教育課程を通したジェンダー・インブリーディングが生じている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である平成25年度は、主として(1)理論的・方法論的枠組みの検討、(2)受験情報誌等調査の実施、(3)データベース構築と定量データ分析からなる3つの研究課題に取組む計画であった。 理論的・方法論的枠組みの検討については、附属学校等に関する調査実施にむけた理論的・方法論的な枠組みを検討してきた。また、附属学校教員も招聘して4回の研究会を開催し、本研究課題の位置づけ、制度分析やナラティブ・アプローチの導入手法、定量的・定性的な分析手法による混合研究法に必要なコミュニケーション手法などの基本的な事項を確認した。 受験情報誌等調査の実施については、近年の受験情報誌や受験産業(内部進学教室など)にみられる附属学校等の取扱いを調査し、制度分析やナラティブ・アプローチに活用できる定量・定性データを収集してきた。また、ナラティブ・アプローチ班が、インタビューや関係文書等の収集を行って、内部推薦の有無による教育理念や組織戦略、組織文化の違いを検討するための定性データを蓄積しつつある。また、事例的に国立大学附属学校の卒業生からナラティブを集めて分析し、モノグラフとして整理し、刊行した。すなわち、佐長健司編『学校秀才を育てる学力・自分づくりが求める学力-聞き語り“学びのヒストリー”から考える明日の教育-』明治図書、2014年である。 こうして、ナラティブ・アプローチを用いるのに適した理論的サンプリングを実現し、インタビュー・ガイドの作成に活かすため、都市規模や設置者、設置年、大学所在地との距離、教員養成課程の有無、進路状況等の基本的なデータをくわえて、附属学校等の暫定的な類型化を試みている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、25年度に行った理論的・方法論的枠組みの検討結果にもとづき、(1)ナラティブ・アプローチによる集中的なインタビュー調査、(2)ナラティブの分析と定量データの再分析、(3)調査研究結果について海外の有識者による外部評価を実施し、研究の妥当性を点検する。また、学協会等での中間発表を通して研究成果を世に問い、研究の質的な向上と改善を図る。 ナラティブ・アプローチによる集中的なインタビュー調査については、ナラティブ・アプローチ国内班を中心として、前年度に検討した理論的サンプリングに即した附属学校等を選定し、十分にラポール(社会的信用)のとれた教諭、卒業生などのステークホルダーを対象に集中的なインタビュー調査を実施する。インタビューの内容はICレコーダーで記録し、テープ起こしのための謝金を使って記録した音声データからトランスクリプトを作成する。 ナラティブの分析と定量データの再分析では、ナラティブ・アプローチ国内班は、作成したトランスクリプトから教授・学習方法、学力やパーソナリティ特性等に関するナラティブを読み込み、附属学校等の類型間で比較分析を行い、附属学校等の組織と教育効果に関する仮説を導き出す。制度分析研究班は、ナラティブ・アプローチ国内班による仮説をもとに、定量データによる検証を行う。 さらに、制度分析研究班とナラティブ・アプローチ班との緊密なコミュニケーションを図りつつ、附属学校等がどのような教育効果をもたらす組織構造上の特徴を備えているのかを確認する。その際、キャリア教育・職業教育などの動向が、附属学校等にどう影響するのかにも留意しながら検討を進め、日本教育学会、日本高等教育学会、日本教育社会学会などでのラウンドテーブルの企画、一般研究発表、附属学校等での公開研究会等をとおして、検討結果について第三者からの評価を得るようにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外の附属学校を対象とする調査研究が一部しか実施できず、旅費の残額が多くなった。その一方で、定量データ、ドキュメント、及び文献の収集には予算額を超えて執行した。これらのような予算執行の変更により、次年度使用額が生じた。 次年度は海外の附属学校等をも対象とするインタビュー調査研究の実施、及び研究の総括を行う研究会の開催を重点に考えている。そのため、次年度使用額は旅費に充てる計画である。
|
Research Products
(5 results)