2014 Fiscal Year Annual Research Report
「特定の親密な友達」の形成が行動制御困難な幼児に与える影響についての実証的研究
Project/Area Number |
25590229
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
服部 敬子 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (70324275)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 親密な友達関係 / 行動制御 / プロジェクト活動 / 集団づくり |
Outline of Annual Research Achievements |
〔研究1〕衝動的な行動問題が顕著な発達障がい児を対象として、親密な友達関係と保育場面での行動制御との関連を検討することを目的として、4,5歳児混合クラスで週1~2回午前中と夕方に参与観察で収集されたエピソード記録の分析を行った。得られたエピソードを、「トラブル」「良好な関係」「その他」の3つに分類して月別に割合を算出しχ2検定を行ったところ有意差が認められ(χ2=41.23,df=10,p<.001)、残差分析の結果、5%水準で6,7月に多かった「トラブル」は10,11月に少なくなり、「良好な関係」「その他」が多くなったことがわかった。A児との関わりが多かった3名に着目して関係の変化をみたところ、互いに思いを出し合い、認め合うという「対等」な関係の形成と行動制御上の変化との関連が示唆された。 〔研究2〕要支援児が多い4歳児クラスでとりわけ指導が困難な男児4名に焦点をあてて、参与観察、及び、担任とのカンファレンスを行った。対象児の一人(Y男)の関心に焦点をあてた「虫」プロジェクト活動の展開期はY男の衝動的な問題行動は観察記録上激減した。この間に親密な友達関係を形成できた男児2名はその後もトラブルが減少し続けたが、友達関係が深まらず行事が苦手なY男、K男は再び行動上の問題が顕著になった。そこで、グループ活動と小集団での遊びを工夫したところ、Y男は特定の親密な友達関係を形成することができ、再び乱暴な行動が激減した。そこで、行動上の問題が継続していたK男と、保育者から「K男と離れてほしい」と考えられていた男児2名を含む小集団での遊びを保障したところ、ふざけやトラブルではない関わりが増え、1月には初めて友達からの言葉かけで自らの行動を調整しグループを意識した行動が観察された。以上の結果から、「よくない」と見える関係の中にも遊びを介して親密性を形成していくことの重要性が示唆された。
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