2014 Fiscal Year Research-status Report
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25590247
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Research Institution | Koriyama Women's University |
Principal Investigator |
山本 裕詞 郡山女子大学, 家政学部, 教授 (40550702)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公教育 / 教育の機会均等 / 教育委員会 / 地方分権 / 学習権 / 教育行政 / 教育政策 / 教育制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、地方自治体による教育施策の適切性を判定するモデルを開発することにあるが、それは教育施策の不適切性が、どのような形や理由で現象化しているのかを解明することと表裏の関係にある。 研究初年度は、栄養教諭の配置状況とその配置過程における地方議会等の議論を分析対象にし、その結果、自治体財政上の自己負担率や当該地域における第一次産業やその関連産業の地域経済上の地位が、配置状況に影響している可能性を指摘することができた。また、本来、教育の機会均等とその水準向上を目指す義務教育費国庫負担法が、逆に、教育機会の不均等を固定化する方向に作用してしまっている疑いが見いだされた。以上は東北教育学会第71回大会において口頭発表するとともに、郡山女子大学紀要第50集に論文を掲載した。 平成26年度は、職の専門性そのものに広範な議論の余地を残すスクールソーシャルワーカー(以下SSWrと記す)を分析対象にした。実際に宮城県内の複数自治体において活動しているSSWrの研究協力を得て、共著にて実践報告「スクールソーシャルワークにおける記録資料の特徴とその重要性」を執筆・投稿した(『学校ソーシャルワーク研究』第10号掲載予定)。この実践報告は、当該SSWrの6年間に及ぶ活動実績を踏まえ、教育行政上の説明責任の観点から、実際に使用された活動記録資料の特徴を分析したものである。この活動資料は、教育行政上期待される教育効果や、SSWrが活動を通して把握した必要を反映した変化を反映しており、ステークホルダーに対する説明責任と同時に、専門職性から見いだされた教育福祉ニーズを満たそうとする点において、教育行政の適切性判定に関して、新たな視角を提示するものといえるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、地方自治体における教育施策の適切性判定のモデルを開発することを目的としている。当初計画においては、栄養教諭に続き、複数の「新しい職」の分析を行い、それらに共通する適切性判定の因子を仮説的に抽出した後に、フィールドワークにて検証する予定であった。 しかし、地方自治体の栄養教諭の配置過程を分析した結果、個別の状況解釈の中で、その適切性を判定する観点を整理することの重要性が明らかになり、研究手法も状況解釈的な手法に微修正した。また、分析の対象も、子どもの相対的貧困率が悪化している今日、その役割期待が拡大しているスクールソーシャルワーカーを対象とすることが本研究の趣旨に適うと判断した。 以上のように、研究途上において自覚された必要から、当初計画における手法や分析対象について微修正を行うことで、状況解釈の手法が整理されてきているので、研究目的の達成に向けては、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の前半においては、スクールソーシャルワーカー(以下SSWrと記す)の配置過程における議論(教育委員会や地方議会等)と、配置実態や活動実態との整合性を確認し、不整合が確認されたケースについては、その状況解釈から適切性を判定する手法を固めたい。以上を関連学会にて発表するとともに、そこでの指摘を踏まえて論文発表する。 平成27年度の後半では、これまでの研究成果をまとめつつ、栄養教諭とSSWrの活動実態、それを取り巻く地域実態の不明な部分について、質問紙の送付と関係者からの聞き取り調査を実施し、新たな教育委員会制度の首長権限にも注目しつつ、両職の分析を通した地方自治体による教育施策の適切性を判定するモデルを仮説的に提示する。最後に、以上の仮説的に提示された判定モデルを検証し、その精度を高めていく段階に向けての研究計画を作成し、三か年の研究のまとめとしたい。
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Causes of Carryover |
研究当初計画においては、学校教育における「新しい職」の配置状況について、自治体間の差異に注目することで、適切性判定の仮説を得て、その検証をフィールドワークによって行う計画であった。しかし、栄養教諭の配置状況等を分析する中で、その適切性判定の材料としては、自治体の状況、栄養教諭の配置・活動状況、全国的な制度環境の三点の関係を、個々の地方自治体ごとに解釈することが、研究目的達成上優先度が高いと自覚されてきた。その結果、フィールドワークの研究上の優先度が後退して旅費等を使用せず、繰越金発生の理由となった。一方で、自治体状況理解の為の資料、栄養教諭職務理解の為の資料、行財政制度理解の為の資料等の購入費に、計画額以上を充てることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、スクールソーシャルワーカー(以下SSWrと記す)の配置状況と、SSWr導入時の議論(教育委員会・地方議会等)との整合・不整合関係を確認するので、議事録等の写しを大量に収集するとともに、教育福祉関係の資料購入を行う。さらに、現職のSSWrに研究協力を依頼し、学会発表等でも参加・協力を得る予定である。また、研究代表者の所属研究機関の異動があったので、それに伴う研究環境整備の為、スキャナー付プリンター等、新たに物品の購入をする計画である。 最後に、栄養教諭とSSWrの配置・活動状況の分析結果から仮説的に見いだされた教育施策の適切性判定の手法を検証すべく、予算の許す範囲でフィールワークを取り入れる予定である。したがって、総額としては計画された予算を使用する見込みである。
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