2013 Fiscal Year Research-status Report
地域連携を核とした防災教育のカリキュラムモデル開発
Project/Area Number |
25590255
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷口 和也 東北大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60281945)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 防災教育 / 市民性教育 / 社会参画 |
Research Abstract |
本年度の研究実績について、大きく三つの角度から述べると以下のようになる。 まず、実践開発については計画通りに「総合的学習の時間」「公民館での市民講座との連動」「サービスラーニング型」の三つを2中学校、1小学校で行った。「総合的な学習の時間」でシミュレーションゲームやアクティビティをともなった防災教育は地域社会の現状への関与の度合いが低く、一方、他の二つは市民的資質育成の方向性が不明瞭なものとなった。次年度は「総合的学習の時間」向けに開発したアクティビティを中心として、地域住民との共同授業を取り入れることで、実社会との連携の強化と市民性教育としての質を上げていく必要性が明らかになった。 第二に防災教育カリキュラムの実施状況の調査であるが、現実には宮城県といえどもほとんど行われていない、もしくは避難訓練時に講習を組み合わせる程度の実施状況であった。実施状況に関しては分析以前の数値で、今後、教科指導の中に防災教育を組み込む方向で教材開発を行う必要があるという結果に至った。 第三に市民性教育としての理論的・実践的原理についてであるが、市民性教育の国際学会であるCitizEDでDevelopment Research of Disaster Prevention Education Program as Citizenship Education― Based on Networking of Community Organizations ―と題して発表を行ったのをはじめ、各所で校種間カリキュラムの連続性と地域との協働の要件について成果の公表を行った。特に地域防災についての知識面と、参画する態度の両面において連続的・発展的に成長させるアクティビティの配列と、学年ごとの役割の明確化が重要となることを明らかにした。 以上が、本年度の研究実績である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、当初予定した研究計画どおりの成果を上げた上に、子どもと地域住民を巻き込んだ「地域防災シンポジウム」の開催や、複数の市民センターの協働によるシンポジウムの企画など、実践現場への研究の還元は当初の予想以上に進んだ。また、「サービスラーニング型」の教育開発も、中学校の協力により予想以上の成果を上げることができ、子どもたちから多くのデータを収集することができた。また、実践現場への還元も「仙台市立中田中学校教員向け防災教育講習会」(8月19日)、「仙台市内市民センター合同防災シンポジウム」(9月23日)、「川崎市PTA協議会への防災教育事例講演」(11月11日)、「全国子供会連合会全国大会基調講演」(2月14日)などを行うことができた。 その一方で、1.防災教育の実施状況に関するアンケート結果から思ったより多様性がなかったこと、2.その結果、カリキュラム開発を一般化したり「総合的な学習の時間」等で使用できる実践集の出版は、内容の大きな見直しを迫られ本年度の出版はできなかった。この出版に関しては平成26年度に移行させる予定である。 これら当初計画以上に研究が進んだ側面と、当初計画の修正を迫られた側面の両者を鑑みて「おおむね順調」という自己評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、平成26年度の研究実績を完成させる年度となっている。 まず、平成26年度の実践開発であるが、1.従来の実践校との協働による防災教育開発の継続に加え、2.従来のカリキュラムの連続性において懸案であった小学校低学年でのアクティビティ開発についても、「イエローリボン」プロジェクトとして仙台市内1か所での実践が決定した。さらに、3.平成27年3月に実施される国連防災世界会議に向けて、「国際的視野から地域防災を考える」ことをテーマに高校生に重点を置いた実践の発展を目指している。現在、仙台市内市立高校四校とポーランドおよびモンゴルの高校が開発研究およびシンポジウムに参加予定である。また、研究成果の公表であるが、平成25年度から持ち越しの出版に加え、研究計画で述べていた教員向けの研究会の開催が、7月と9月に開催予定である。ここまでは予定通り、または従来計画の延長線上である。 一方、研究計画の変更を迫られている部分としては、当初予想より防災教育の多様性がなかったことや、多くの学校でそれほど浸透していない状況から、通常の教科指導の中で「市民性教育としての防災教育」を挿入するような実践開発をより重視することになる点である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
8月に実施したアンケート調査の結果、宮城県における防災教育の実施状況が思ったほどの多様性がなかったことで分析の方法を変える必要があり、アンケートの分析に必要な人件費等の支出が少なかったこと。また、一部学校の要望で、授業の補助をアルバイト学生でなく教員が行うようになったことがあげられる。 また、この結果に伴って出版の部分で内容を大きく変更する必要が生じたこと。すなわち、ある程度の連続的な時間を確保した防災教育のカリキュラム開発の提案を計画していたが、実際にそのようにして防災教育の年間計画を立てている学校はほとんどなかったため、出版物の内容をシフトする必要が生じた。 さらに、1.成果発表が招待発表だったり、主催者からの補助金が出たこと、2.出版を延期したため出版社との交渉のための旅費が浮いたことなどで、科研費の適正な使用を行った結果、今年度の出費はなかった。 次年度使用に持ち越した予算は、1.計画変更した出版内容に即した形の書籍購入や、2.一部発展的に行おうとしている高等学校での実践に使用する予定である。 人件費については、計画変更に伴ってアンケート調査のやり直しをすること、高等学校まで含めた実践の拡大に伴って人員が必要とされることが予想されるので、次年度持ち越しの対象とした。 さらに、出版計画を今年度に変更したこともあり、各実践家との打ち合わせや共同発表、出版社との交渉などに持ち越し分の旅費の支出も含めて使用する予定である。
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