2014 Fiscal Year Research-status Report
情報介入と行動介入による段階的、発展的な金融リテラシーの醸成に関する研究
Project/Area Number |
25590260
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
竹本 拓治 福井大学, 産学官連携本部, 准教授 (30542104)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 金融教育 / 金融リテラシー / 行動介入 / 情報介入 / シリアスゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、金融経済知識が現代の社会生活を営む上でヒトに必要なリテラシーとして捉え、諸外国の金融教育の事例研究や、世界的な金融情勢をサーベイしつつ、わが国における金融リテラシー教育のあり方を研究している。 平成26年度は、行動介入による金融リテラシー学習に関し、国外事例の視察調査、近年のヒトの金融行動に影響を与えているクラウドファンディングのわが国および諸外国の状況、そして既存のゲームにおけるシリアスゲーム要素を分析した。 国外では、ゲームに分類されるもの以外にも自発的な行動を促す取り組みや、ヒトの行動に影響を与える事例がみられ、複数の社会的な施設の意義が確認された。 ヒトの金融行動について、従来の投資と比較した場合、クラウドファンディングでは共感が重要な要素となっている。これは購入型、寄付型、株式型の全てに共通する。一方で日本におけるクラウドファンディングの広がりは海外と比較して特殊な部分も存在し、この点については論文発表としてまとめた。 金融教育における行動介入の方法としてのゲームの応用では、その仕様策定を進めた。過去に親しまれてきたボードゲームを実験として用いて、その効果を検証した。ゲームを疑似的に用いた金融行動において、高いゲームスコアを出す(ゲームに勝つ)には協調と競争のバランスの必要であるが、ヒトが実際に行動に移す際には不合理行動が確認され、また一定の規則性が存在した。行動バイアスの要因となる、複雑な情報処理、リスクや不確実性、2 時点間の利益の考慮、リターンの計算といった複数の要素は、ゲームにおける偶然性と戦略性の関係に関連可能なことが明確になった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請当初の計画にもとづき、国外における情報介入とは異なる金融教育例をサーベイし、行動介入としてわが国への導入、金融教育カリキュラムの構築について検証を行うことができた。また教員免許更新講習を通じ、大学外の授業現場においても調査を進めることができた。 金融教育の効果としての社会への影響について、近年、注目されるクラウドファンディングは、情報社会における行動介入としての可能性を有していることから、その国際比較を進めることができた点は、当初計画以上の成果をみた。 ゲームの教育利用に関しては、既存のゲームを用いて実験したことで、開発に必要な要素をまとめることができた。その上で、新たに構築する予定の金融教育に関するゲームについて、仕様を策定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、これまでの現場における金融教育に関するデータをもとに、行動介入としての金融リテラシーの醸成について適正とされる層を定めたうえで、金融教育システムの開発を行う。これまで情報介入視点の金融教育方法のみならず、ゲームを一ツールとした行動介入の研究を続けてきたこと、またゲームそのものの可能性を探求してきたことを踏まえ、段階的で発展的な金融リテラシーの醸成に適合したゲームシステムをプロトタイプする。 ゲームシステムを完成させた後は、被験者(テスター)によるデータの収集とチェックにより、ゲーム内におけるバランス調整を行う。教育的な効果測定として、被験者に対し調査を行い、金融リテラシーの向上への寄与、課題を抽出し、その結果から同研究の更なる深化へとつなげていく予定である。 当該年度は、国際学会IACSEE(International Association of Citizenship, Social & Economic Education)の開催年であり、同国際学会にて学会発表を行うと共に、学校教育における金融教育方法について、海外研究者とのディスカッションを行う。また本務校における大学生を対象とした講義では、ゲームの実証実験を行い、その精度の確認と調整を行う。海外研究協力者、ならびに大学以外の教員の協力を得て、研究成果のアウトプットの高度化を目指す。
|
Causes of Carryover |
国外サーベイにおける対象国を変更したこと、および一部の物品(ソフトウェア)に関する発売延期等があった。研究の進捗に影響の出るものではなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度にて消耗品費、および国際学会への参加費、旅費として使用予定である。
|