2014 Fiscal Year Research-status Report
リスクマネジメントプロセスを援用した安全学習教材と授業案の作成及びその効果の検証
Project/Area Number |
25590263
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
村越 真 静岡大学, 教育学部, 教授 (30210032)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中道 圭人 静岡大学, 教育学部, 准教授 (70454303)
藤井 基貴 静岡大学, 教育学部, 准教授 (80512532)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | KYTシート / 規範逸脱判断の発達 / ジレンマ / 安全教育 / 防災道徳 |
Outline of Annual Research Achievements |
①基礎研究として、「非日常的な場面での社会的規範の違反行為の判断」の発達を検討した。小学校3~6年生と大学生に対して、地震など非日常的場面で、日常的に設定されているルールを逸脱してもよいかの判断を求めた。その結果発達段階が低い場合は、ルールへの判断が固定的である一方で、発達段階が進むにつれて他律的(先生が許可したからよい)になりえることも示している。安全教育においては「おはしも」などのルールを教える実践が目立つが、必要なときにルールを柔軟に適用できるための教育も必要であることが示唆される(担当:中道圭人)。 ②大学生を対象に、日常や活動場面での危険認知の能力について検討した(担当:村越真)。初等中等教育場面で利用可能な野外活動、理科、技術、体育場面のKYT図版を完成させた。自然体験場面のKYTシートを利用した一般学生および教員養成系大学生のリスクの特定、分析・評価、対処の特性と学習による変容について25年度の知見を確認する研究を行った。一般体育受講の学生を対象とする研究1では、危険特定に関する効果は見られなかったが、安全行動に関する意識は事前に比べ向上していた。教員養成系大学3年を対象とする研究2では25年度と異なり、2回の安全教育をした実験群に顕著な変化が見られなかったが、意識の向上は見られた。これらのことから、意識面ではKYTのトレーニングは効果的だが、危険認知スキルの学習効果を規定する要因は更なる検討が必要である。 ③道徳教育の視点から「考える」道徳教育ともなる防災教育の実践を行った(担当:藤井基貴)。小学校を対象にして、災害時のジレンマ(災害時、下校中の年下の子どもに避難を促しにいくか、自分がすぐに避難するか)を題材にした教材により児童に災害時にどう行動すべきかやそのときありえるジレンマ、またそれを回避する方法を考えさせる授業を実施し、現場からは高い評価を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの本研究から、ハザードが避けられない環境の中で安全を確保するためには、リスクの特定や評価に加えて、ジレンマの解決、日常的なルールの逸脱も場合によっては必要になると考えられる。これは、今後の防災・安全教育を考えるうえでの重要な示唆につながると考えられる。 前者のリスクの特定や評価に関しては、KYTシートや環境写真などの教材を利用して、小学生から大学生にいたる広範な対象が環境内にある危険についてどのように認知しているかの実態が明らかになった。また、教育効果の検討についても、本年度は大学生を対象に実施した。開発したKYTシート利用の授業案については、相模原市教育委員会に提供され、研修に利用される予定である。 後者の規則からの逸脱やジレンマに関しては、非日常的な場面での社会的規範の逸脱についての判断が発達に応じてどう変化するのかを検討することができた。また。初等教育で実践可能な形での災害時のジレンマを通した道徳の授業を完成させることができた。この結果はNHKのBS番組でも取り上げられると同時に、防災甲子園でも優秀賞を受賞した。 これらの理由から、「概ね予定通りとした」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
過去2年間の研究を元に、27年度は、作成されたKYTシートを利用して、環境内にあるリスクを特定し、分析評価するスキルの発達差について整理するとともに、適切な意志決定ができることを目的とする安全教育のための総合的プログラムを開発する。この際、ジレンマや日常的な規範からの逸脱といった視点を考慮する。プログラムの開発にあたっては、小学校・中学校および教員養成系大学で実施しながら、課題を洗い出して進める。最終的には、学校教育現場や教員養成の課程で実施可能な授業案・指導案の作成を行い、授業効果の検証を行う。
|
Causes of Carryover |
KYTの一部図版が未完成だったため、謝金としての支出が26年度中に行えなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
KYT図版作成のための謝金として支出
|
Research Products
(7 results)