2013 Fiscal Year Research-status Report
日本の小学校理科教科書の国際教育協力への活用可能性の検討と研修プログラム開発
Project/Area Number |
25590271
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
畑中 敏伸 東邦大学, 理学部, 准教授 (30385942)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 国際教育協力 / 小学校理科 / 教員研修 / 教員養成 |
Research Abstract |
本研究の目的は,小学校理科教科書を用いて,開発途上国の理科教員及び教員養成段階の学生を対象とする研修プログラムを開発することである.当該年度は,小学校理科教科書を翻訳し,空気と水,電磁石の性質,ものの重さ,てこのはたらき,豆電球の単元の教材を用意し研修を行い,その効果を評価した.研修内容は,翻訳した日本の小学校理科教科書を用いて,市販の実験キットを用いて,実験方法の説明や,単元内での授業構成に関する研修を行った. 研修は,次の場所,対象,日程で行った.フィリピンセブ市のサンカルロス大学にて,付属小学校教員20人を対象とした研修を,5月6日7日の2日間計12時間行った.フィリピンケソン市のフィリピン大学国立理科数学教育研究所において,公立小学校教員21人を対象に研修を,5月9日10日の2日間計12時間行った.マレーシアペナン州のSEAMEO-RECSAMにおいて,公立小学校教員20名を対象に研修を,6月24日から26日まで3日間計6時間行った.その他に,マレーシアの教員養成校であるInstitute of Teacher Education, Penang Campusにて,教員養成課程の学生38名に,6月26日に2時間,空気と水に関する小学校理科教科書と実験教材を紹介するワークショップを行った.マレーシアペナン州のSEAMEO-RECSAMにおいて,マレーシアの小学校教員を対象に日本の小学校の理科教科書と授業を紹介する講演を6月27日に2時間行った. 日本の小学校理科教科書の特色を説明し,実際に教材の使い方を学ぶ研修は,フィリピンとマレーシアの理科教員及び教員養成段階の学生にとって,新規性があり,肯定的に捉えられることが明らかとなった.また,研修を通して,実験操作スキルと単元に関連する科学的知識を習得できることが明らかとなった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
小学校の理科教科書の単元のうち,計画時に研修として提供することを計画していた単元より多くの単元の理科教科書の翻訳と,実験キットを用いた研修を行うことができた.研修は,教材と単元に関するスキルと知識が習得され,日本の理科教科書と授業方法が肯定的に捉えられ,フィリピンとマレーシアの理科教育に比べて新規性もあるとの反応があったため,有用な研修となりうることが伺えた.このように,当初計画していた以上の単元を扱った研修を行うことが出来た点と,それらの単元に関して効果的な研修プログラム開発が進められることが明らかになった点については,当初の計画以上に研究が進展した. 当該年度は,研修についての評価は,研修終了後の質問紙調査を中心に行った.しかし,研修受講者の観察や教員研修指導者からのフィードバックなどを踏まえると,研修で習得された事項が,現地の理科授業で活用できるのか否かについては疑問が生じ,今後は,研修後に研修受講者が行う授業観察などの評価方法を取り入れた現地調査の必要がある.この点は,当初計画していなかった新たな課題であり,本研究の遂行上今後検討しなければいけない点である.このため次年度は,再度当該年度と同様の単元で研修を実施し,研修後の質問紙調査による評価に加え,研修受講者の授業実践の変化を評価し,他の側面からの研修評価を行う.この新たな検討課題が生じていることから,研究の最終的な目標である研修プログラムを開発するための進捗状況としては,現状ではやや遅れていると判断する.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究で検討する対象地は,研究計画当初はフィリピンとマレーシアであった.両国では,研究協力者の支援により研修受講者を集めることができ,研修を行うことができた.当該年度の研究結果を踏まえると,研修成果がどのように理科授業実践に影響を受けるかというより詳細な評価が必要となるため,学校での理科授業の変化を観察できる調査が必要であり,その点を理解してもらい協力してもらえる研究協力者が必要となる. 次年度は,フィリピンセブ市のサンカルロス大学付属小学校,フィリピンケソン市のフィリピン大学国立理科数学教育研究所近隣の公立学校で継続的な調査を行う.調査では,当該年度の研修結果を,授業実践で活かすことが出来ているか否かを明らかにする観察調査を行う.他方,マレーシアでの調査は,学校を訪問しての調査の許可手続きが煩雑なことなどから,次年度は行わない.そのかわりに,フィリピンとマレーシアと類似した課題を抱えているタイを対象とした研究を計画する.タイのコンケン大学は,これまでの日本との共同研究の実績から,本研究方法に関して理解を得ることが可能である,タイのコンケンの公立小学校教員を対象として研修を行い,その研修評価に加えて,その後の授業実践の変化を調べることも併せて行い,多角的な評価をおこなう. このように,次年度は,研修の結果がどのように理科授業実践の変化に寄与するかという視点での評価を行い,最終的な研修プログラム開発へ結びつけていきたい.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
為替と航空券費用が当初の計画に比べて異なっていたため,若干の残額が発生した. 当該年度の残額は,次に示す次年度の海外調査に合算して使用する. 7月にタイのコンケン大学にて,公立小学校教員を対象として研修を行い,その研修の成果を評価するために,その後の2日間に受講者に理科授業を行ってもらい,その授業観察を行うことで,研修の授業での活用可能性について調査する.その際の海外渡航費,材料代,協力者謝金,国内交通費に使用する.8月にフィリピンセブ市のサンカルロス大学付属小学校,年度の下半期にフィリピンケソン市のフィリピン大学国立理科数学教育研究所近隣の公立学校において,当該年度に行った研修を理科授業に活用できるか否かを観察し,教員にインタビューする調査を行う.その際の海外渡航費,材料代,協力者謝金,国内交通費に使用する.
|