2014 Fiscal Year Research-status Report
日本の小学校理科教科書の国際教育協力への活用可能性の検討と研修プログラム開発
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25590271
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
畑中 敏伸 東邦大学, 理学部, 准教授 (30385942)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際教育協力 / 教員研修 / 教員養成 / 小学校理科 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,小学校理科教科書を用いて,開発途上国の理科教員及び教員養成段階の学生を対象とする研修プログラムを開発することである。初年度は,空気と水,電磁石の性質,ものの重さ,てこのはたらき,豆電球の単元の小学校理科教科書を翻訳し,教材を用意し,それぞれの単元での実験方法や授業構成に関する研修を行った。調査の結果,フィリピンとマレーシアの理科教員及び教員養成段階の学生にとって,研修内容は新規性があり肯定的に捉えられること,研修を通して実験操作スキルと単元内の科学的知識が習得できることが明らかとなった。他方,研修内容が実際の理科授業で活用されるか否かまでは明らかにできなかったことが課題であった。 2年目となる本年度は,研修の評価について研修終了時の質問紙調査を補完するための調査を行った。2014年8月18日から29日にフィリピンのセブ市のサンカルロス大学付属小学校で前年度に研修を受講した教員に,研修で扱った単元に関して教科書と教材を用いた授業を行ってもらい,その授業を観察し,研修内容をどのように授業に活用できるかを調査した。タイのコンケン市において2014年7月1日から3日に,豆電球の単元で研修を行い,その後研修内容を授業で活用できるか,受講者の行う授業を観察する調査を行った。 その結果,研修で扱った小学校理科教科書の扱う教材を授業で使うことはできるが,次の2点での課題が見られた。第1に授業において,授業のねらいを明確にし,明らかにすべき課題を把握させ,そのための実験方法を示し,児童に結果を発表させるという一連の問題解決的なもしくは探究的な授業構成とすることが出来ないことが課題である。第2に教材を適切に配り,時間内で実験結果を児童に見いださせるよう,教材を適切に活用したスムーズな授業運営を行うことが出来ないという課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小学校の理科教科書の単元のうち,初年度には当初の計画より多くの単元の理科教科書の翻訳と,実験キットを用いた研修を行うことができた。研修では,教材と単元に関するスキルと知識が習得され,日本の理科教科書と授業方法が肯定的に捉えられ,フィリピンのマレーシアの理科教育に比べて新規性があるとの反応があり,有用な研修となりうることが伺えた。 しかし研修についての評価については,研修が理科授業の向上に結びつくかという視点は不明確であったため,研修終了後の質問紙調査のみならず,研修受講者が実際に行う授業の観察まで行うこととした。このように評価の方法を当初の計画から変え,研修内容を授業で活用できるかという実践的側面で行うようにした点で大きく進展した。他方,調査対象とする研修単元の数は3カ年の計画としては当初想定より少なくなることとなった。研修プログラム開発の方向性は,多くの単元数を調査し研修で扱う理科の内容の範囲を広げる方向ではなく,授業の改善に直接つながるより効果的な研修プログラムを開発する方向へ変更している。 対象国については,初年度のフィリピン,マレーシアに加え,本年度は,タイ,次年度はインドネシアも加え,東南アジアの4カ国の共通点を見出すという観点で進展が得られたことは,当初の計画以上である。 以上のように達成度については進展している点と遅れている点が混在しているが,総合的に判断しおおむね順調に進展しているとする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進の方針は,研修プログラムを多様な国で適用できるように適用範囲を広げることを検討することと,研修プログラムにより理科の授業実践が変わるというところまで視野に入れて研修プログラム内容を深化させることである。 多くの国で活用できる研修プログラムを検討するために,これまでの調査地であるフィリピン,マレーシア,タイにインドネシアを加えて4カ国での調査を進める。インドネシアに関しては5月にインドネシア教育大学付属小学校での調査を予定している。下半期には,タイのコンケンの小学校での調査を予定している。フィリピンでの調査は,フィリピンセブ市のサンカルロス大学付属小学校,フィリピンケソン市のフィリピン大学国立理科数学教育研究所近隣の公立学校を予定している。 第2に,研修プログラムを受講後に,研修内容を授業で活用できることまでを評価の視野に入れているため,研修後に,研修受講者に研修内容に関する理科授業を行ったもらい,観察とインタビューによる評価を行っていく。
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Causes of Carryover |
為替や航空券費用の変動などの要因で若干の残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度の残額は,次に示す次年度の海外調査に合算して使用する. 2015年5月に,2014年7月にタイのコンケン大学にて,公立小学校教員を対象として研修を行った結果の分析のため,海外渡航費,材料代,協力者謝金,国内交通費に使用する.2015年5月に,インドネシアバンドン市のインドネシア教育大学付属小学校で,昨年度に行った研修を行い,理科授業に活用できるか否かを観察し,教員にインタビューする調査を行う.その際の海外渡航費,材料代,協力者謝金,国内交通費に使用する.年度の下半期に,タイのコンケン市の公立学校,フィリピンセブ市のサンカルロス大学付属小学校,フィリピンケソン市のフィリピン大学国立理科数学教育研究所近隣の公立学校において,研修を行い,研修で扱った内容を研修受講者が理科授業に活用できるかを観察し,教員にインタビューする調査を行う.その際の海外渡航費,材料代,協力者謝金,国内交通費に使用する.
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