2013 Fiscal Year Research-status Report
適応指導教室と中学校支援室を活用する再登校援助システムの開発
Project/Area Number |
25590281
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大川 一郎 筑波大学, 人間系, 教授 (90241760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小玉 正博 埼玉学園大学, 人間学部, 教授 (00114075)
藤生 英行 筑波大学, 人間系, 教授 (40251003)
石隈 利紀 筑波大学, 副学長 (50232278)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 不登校 / 別室登校 / 支援システム / ケースマネジメント / 学校経営計画 / チーム援助 |
Research Abstract |
いじめ等を原因として長期不登校に陥った中学生への再登校援助システムとそこでのスクールソーシャルワーカー(以下 SSW)のロールモデルの開発を行うことを目的とし、初年度においては、中学校での不登校生徒の別室登校に対して、教室登校を実現する支援システムの実用的モデルの開発を行った。 方法としては、先行研究(中村ら, 2008,2013)で作成された別室援助モデルを基に、中学校現場での教職員の援用の可否の視点から精査した。先行研究は、関東圏の公立中学校での直接支援者20名および管理職10名に対する半構造化面接を基にM-GTAを用いて生成された別室支援モデルである。このモデルについて、練馬区教育委員会登校支援課の協力の下(職員3名(小学校および中学校退職校長各1名、心理士1名))、当研究チームからの派遣SSW(研究協力者))を加えて、モデルの検討を行った。 結果は、5カテゴリーグループ、25カテゴリーから成る支援システムのモデルが生成された。不登校生徒への別室登校に対する支援は「I学校経営計画上での決定」を経て「II支援チーム形成」がされ、実践では「IIIケースマネジメントの展開」と「IVチームマネジメントの展開」が並行して行われる。別室登校を経由して「V学級復帰」が実現すると、「別室登校支援の定着と協働体制の広がり」が期待されるというものである。 M-GTAによる支援モデルからの主な修正点は以下である。①個別支援に初めて携わる教職員にも、具体的な実践イメージが得られるように、別室運営および生徒支援の順序を追ってアクションプランでシステムモデルを構成した。②ケースマネジメントにおいては、「掌中への取り込み支援」「級友とつなぎ援助」など質的支援を加えた。③使用する用語について、援助を支援、学校マネジメントを学校経営計画など、学校現場に即したわかりやすい用語に置き換えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の最大の目的であった、中学校での不登校生徒の別室登校に対しての教室登校を実現する支援システムの実用的モデルの開発については、研究協力機関である練馬区教育センターとの連携のもと、ほぼ達成された。 ただ、モデル実践に基づくモデルの改善については、モデルの研究協力校の選定、及び、調整に慎重を期したため、想定していた以上に時間がかかったこともあり、次年度(平成26年度)からの実施となった。 なお、本モデルの開発は、研究協力機関である練馬区教育センター(平成26年度より練馬区学校支援センターに名称改変)の職員と連携し、協働で行ったため、そのモデルに共感し実践を希望する職員が研究協力者として介入研究に参加する段取りが整った。これにより、研究協力校への直接的な介入は、当初予定されていた筑波大学派遣の研究協力者1名の他に練馬区学校支援センターから2名の研究協力者が担当することになった。当該協力者とは、実践モデルの開発を通して十全な擦り合わせが行われ、介入イメージの共通認識がはかられた。
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Strategy for Future Research Activity |
「学級復帰のための中学校支援室登校の援助プログラム開発」としての実践的研究を行う。具体的には、研究協力校である中学校に介入し、不登校生徒4名を対象に校内支援室を開設する。支援開始に際しては、前年度に開発した別室支援モデルに基づいて支援を行う。 研究協力者としてスクールソーシャルワーカー(以下SSW)を担う人材は3名である。そのうち2名は研究協力機関である練馬区学校支援センターから、1名はスーパーバイザーとして当研究プロジェクトから中学校に介入する。SSWはモデル中学校の教職員と支援チームを形成する。 協働での実施の主な事項としては、①チーム形成および各人の役割分担の設定、②対象生徒の選定および個別のアセスメント、③教職員と連携した家庭訪問、④別室での個別支援等である。生徒の変化については、面接法、テスト法、行動観察法の3側面から評価する。 生徒の変化からモデル適合性を検討し、生徒の状態や変化に即応してモデルの修正を試行する。「適応指導教室から中学校支援室への援助プログラム開発」においては、適応指導教室通級生365名を対象にした実証研究によって作成された「適応指導教室から中学校支援室への援助モデル」(中村ら,2012)を基に、実践的援助モデルを開発する。モデル中学校での適応指導教室通級中の生徒を対象に援助を行い、生徒の変化からモデル適合性を検討し、生徒の状態や変化に即応してモデルの修正を試行する。さらに、両プログラムの実践データに基づき、「総合的な再登校のための援助システムモデル」を開発する予定でいる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、最大の目的であった、中学校での不登校生徒の別室登校に対しての教室登校を実現する支援システムの実用的モデルの開発については、研究協力機関である練馬区教育センターとの連携のもと、ほぼ達成されたが、モデルの実践に基づくモデルの改善については、モデルの研究協力校の選定、及び、調整に慎重を期したため、想定していた以上に時間がかかったこともあり、次年度(平成26年度)からの実施となった。助成金に残額が生じた主な理由は、ここにある。 次年度は、「学級復帰のための中学校支援室登校の援助プログラム開発」としての実践的研究を行う。具体的には、研究協力校である中学校に介入し、不登校生徒4名を対象に校内支援室を開設する。支援開始に際しては、前年度に開発した別室支援モデルに基づいて支援を行う。昨年度の差引額については、これらの実施に係わる謝金等で使用の予定である。また、次年度は、当該テーマに関して関連学会でのシンポジウム等を企画しているので、旅費等の費用でも使用する予定である。
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