2014 Fiscal Year Research-status Report
適応指導教室と中学校支援室を活用する再登校援助システムの開発
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25590281
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大川 一郎 筑波大学, 人間系, 教授 (90241760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小玉 正博 埼玉学園大学, 人間学部, 教授 (00114075)
藤生 英行 筑波大学, 人間系, 教授 (40251003)
石隈 利紀 筑波大学, 副学長 (50232278)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 適応指導教室 / 中学校 / 支援室 / 再登校援助システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度作成したモデルに基づき、研究協力者を派遣して中学校支援室で介入研究を行い、モデルの適合性を検討した。その結果、「学級復帰のための中学校別室登校の支援モデル」では見過ごされていた下記の要件が抽出された。 まず、別室運営の要件として、①学校では、上位組織である教育委員会からの承認と学校支援が得られないと、マンパワー確保面からも管理職支援の面からも別室運営を継続することは困難である。②別室支援にあたり、教職員の支援目的を統一しないと、各担任の支援観に規定され、同僚に迷惑をかけない組織への配慮が優先されがちである。登校再建の要件として、対象生徒に支援室への登校を促すには以下の要因が必要となる。①自分の思っていることを聞いてくれて、学校環境との折り合いを調整し、安全基地として機能する職員が存在している。②学校に足が向かないとき、家庭訪問などでさそい出してくれる職員が存在している。③学校での活動に本人が意味を見出している。登校定着を促す要件として、①学習支援では、できそうでできない問題にフィットさせ達成感を獲得させると、支援者に高い信頼が寄せられ、速やかに関係が構築される。②人間関係がうまく作れない生徒は、2者関係から3者関係に発展させる時抵抗が強く、退行を示しがちなので、仲間関係形成に対する介入が求められる。③進路を考えさせ、その具現のためのプログラムをつくると登校動機が高められる。ただし、不登校生徒は現実検討力が不十分な場合が多く、進路は現実感覚の獲得とともに二転三転するので、これに苛立つ教師も少なくない。アドボカシーが必要である。 これらの要件を踏まえて、支援モデルの修正が行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究での課題は、不登校生徒の再登校援助システムの開発である。 平成25年度は、中学校職員を対象にしたM-GATでの調査研究による先行研究(中村ら, 2008,2013)を基に「学級復帰のための中学校別室登校の支援モデル」を開発した。本モデルは、校内支援室運営マニュアルとして、研究協力機関である都区内にある区の教育センターを通して研究協力校であるモデル中学校と同センターのスクールソーシャルワーカー、非常勤相談員、適応指導教室職員に配布され、当研究チームの研究協力者を講師に学習会が行われた。また、平成26年3月にモデル中学校が選定され、区の教育センターから派遣されるスクールソーシャルワーカーと中学校の校内支援室の担当者チームメンバーが選出された。 平成26年度においては、研究協力校であるモデル中学校に当研究チームの研究協力者が派遣され、当該中学校および学校支援センターと合同でチーム形成し、3ヶ月間の介入研究が行われた。介入終了後、介入時のデータを解析して支援対象生徒6名に対してモデル適合性が検討された。検討の結果、上記報告の通りモデルの修正が行われた。 モデル中学校に対する介入研究は、介入時の校内体制は整備された環境とはいえず、混乱が生じたが、逆にそのことにより、対象生徒に対するモデルの適合性にあたって、不十分であった要件が抽出され、それらの要件も加えたモデルの修正を行った。また、登校行動の再建に関して、家庭訪問の重要性が改めてクローズアップされることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実施された本介入研究の成果として、登校行動再建に際しての家庭訪問の重要性が改めてクローズアップされた。そこで、「不登校生徒の再登校援助システム」の一貫として、家庭訪問プログラムの開発を行っていく。 方法としては、関東圏の中学校で、長期不登校生徒に家庭訪問し、校内支援室への登校行動形成を実現した対人援助職10名を対象に半構造化面接を行う。調査対象者は縁故法により抽出し、調査協力者が対象者と60分程度、個別に半構造化面接を行う。面接内容は対象者の同意のもと、メモに記載したり、ICレコーダーに記録する。インタビューガイドとして、①これまで行った家庭訪問について、不登校生徒が再登校にいたるまでにどのような働きかけや支援を行ったのか、具体的にお教えください。②家庭訪問にあたり、事前準備や役割分担などの校内調整などを行っていたら、その内容もお教えください、等を想定している。分析方法では、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(木下,2007)を用い、不登校生徒対象に行う家庭訪問のプロセスモデルを開発していく。 本年度の介入研究で修正された「学級復帰のための中学校別室登校の支援モデル」に家庭訪問モデルを加え、両者を統合することで「不登校生徒の再登校援助システム」を完成する見通しである。 なお、上記研究の成果については、日本心理学会でのポスター発表ならびにシンポジウム開催による報告、論文化しての投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
予定していた謝金が少なくてすんだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越分を合わせて、学会等での発表のための旅費にあてる。
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